レジリエンスの未来

Vol.01「Bohsai BAR」(防災バー)「ここに来るだけで防災力が上がる、そんな場所を作りたかった」

「ここに来るだけで防災力が上がる、そんな場所を作りたかった」

さまざまな立場から【レジリエンスの未来】に向かう人・活動を紹介する「アクティビティーズ」。 今回は、防災意識が低い若い世代に対してオープンなコミュニティを開放し、防災を少しでも身近に感じてもらうための集いの場「Bohsai BAR」(防災バー)にお邪魔し、主催者の若松さんにお話をお聞きしました。

BohsaiBARマスター/防災士 一般社団法人震災リゲイン 事務局長 若松 海(わかまつ・かい)さん
Bohsai BAR マスター/防災士
一般社団法人 震災リゲイン 事務局長

若 松 海 (わかまつ・かい) さん

「既成概念にとらわれない、新たな防災対策を生み出す場」

JR神田駅から徒歩5分、ビルに挟まれた細路地の1F。ここで毎週水曜日の夜に「Bohsai BAR」が開催されている。ガレージを改装したオープンスペースを会場として、防災士の資格を持つマスター若松海さんが仲間を迎え入れる。

「防災関連のワークショップに参加しても、日常会話レベルの身近な防災対策や、参加後も続く人のつながりにまで配慮しているところが少ないのが気になっていました。それなら自分で作ってしまおうと立ち上げたのが『Bohsai BAR』という「場」です。一人ひとりの知恵や経験、リソースをいかにして防災に活用できるか、そして既成概念にとらわれない創造的な防災アイデアを導きだす対話の場として、多くの人に興味を持ってもらえたらうれしいですね」

なぜバーだったのかいうと、「“夜”のイメージが欲しかったんです」と笑う若松さん。陽の光の下に集まるのではなく、仲間内のちょっとした悪だくみのイメージ。 そんな隠れ家的な雰囲気に惹かれた人がまた人を呼び、社会人、学生など立場に関わらず週に一度集まる。

「仕事、恋愛、人生観……ここに来た人は本当にいろいろな話をして帰られます。何も防災に限った話でなくてもいい。どうしても肩肘を張ってしまう人もいますからね。ただ、こうした集まってきてくれた人たちと何か新しいことをしたいという想いが“つながり”となって、来るべき次の災害に備えることになると思うんです」

お話を伺った当日はあいにくの雨模様。それにも関わらず男女15名ほどがBohsai BARに集まった。三陸地方で穫れた海の幸のバーベキューや東北の地酒など、食事を楽しみながら会話に花咲かせる姿がここそこに見える。

「人が取れるコミュニケーションの量には限りがあります。だからこそBohsai BARに集まってきた人がつながり、災害発生を想定して事前に何をすればよいか話し合うこと、それこそが真の防災ではないでしょうか。まだまだ小さなコミュニティです。どんなメニューやコンテンツを用意すれば若い人たちを惹きつけられるかなど、幅広い意見を多くの人たちから集めたいですね」

「日本を世界で一番の防災国にしたい」

「Bohsai BARはホームパーティーのようなイベントですが、食事を通して防災を身近に感じてもらいたいということで、料理や飲み物もひと工夫こらしています。ポイントは“日持ちのよさ”。 日本には昔から保存性に優れた『常備食』というものがありますが、味付けの濃さや塩分の加減などからお酒のつまみにもおすすめです。 他にもフルーツの自家製酢漬けや酢の物、乾燥食など、美味しいだけではなく保存がきく『防災食』を楽しんでもらえたらと思います」

フルーツの酢漬けを割るのに使うソーダは、美味しく楽しく防災意識を高める鎌倉のご当地商品『鎌倉戦隊ボウ・サイダー』を使用している。「地場に根ざした全国の防災関連商品をBohsai BARで紹介できたら面白いですね」と語る若松さん。

「僕は日本を世界で一番災害に強い国にしたいんです。強いというのは何もハード面の話だけではありません。 ソフトの最小単位である人と人とのコミュニケーションを密にとれば、いままでになかった新たな防災対策が見えてくる──Bohsai BARをきっかけとしてそんなモデルケースが作れればいいですね。 『自分たちがやらないと』という意識を一人ひとりが持つことこそ、防災の第一歩なのですから」

東日本大震災後、何度も現地を訪れた若松さんは、復興とは外部からの意見や声が成し遂げるものではなく、その場にいる人々同士の対話、コミュニケーションが発端になることに気づかされた。そしてそのきっかけは、案外近くにあるということにも。

「こんな話を聞いたことがあります。地域のお祭りがなぜ神社で開かれるかというと、そのエリアでもっとも地質が頑丈で、いざというときの避難場所とされているからです。お神輿がいい例です。お神輿は神社を出発点として再び神社に戻りますからね、お神輿のルートを覚えていれば自然と安全な場所に避難できるわけです。お祭りに参加することで、地域の、家族の、そして自分自身の安全を確保する方法を身体に染み込ませることができるのです。
Bohsai BARもそんな存在になりたいと考えています。遊びに来てもらうたびに非常食セットを持ち帰ってもらったり、たまたまそこにいた人の話を聞くことが防災訓練になるなど、日々の暮らしと防災対策の距離感をなくすための具体的なアイデアをカタチにしていきたいですね」

Information

Bohsai BAR
(防災バー)
住所 東京都千代田区内神田1-16
FUTURE HOUSE lab.1F
アクセス JR神田駅、東京メトロ神田駅から徒歩5分
開催日 毎週水曜日19:00~23:00
URL https://www.facebook.com/bohsai.bar

◇震災リゲイン
http://shinsairegain.jp/

東日本大震災を機に発足した震災情報専門メディア。誰がどこで救済・復興活動を続けているか一覧できるポータルサイト「震災リゲイン」を運営する。一人でも多くの人が震災発生時にその生命をつなぐことができるよう、過去・現在・未来の震災に関する情報発信や、被災者支援を行う方々のサポートを行う。若松さんは同団体の事務局長を務める。