レジリエンスの未来

2016.3.3 京都大学GSS産学連携×「レジリエンスの未来」「レジリエンス・プロジェクトをデザインしよう!」開催レポート

2016年3月3日に開催された、京都大学グローバル生存学大学院連携プログラム(GSS)との産学連携ワークショップのレポートです。

グローバル生存学大学院連携(GSS)プログラムとは

京都大学の9つの研究科(教育学、経済学、理学、医学、工学、農学、アジア・アフリカ地域研究、情報学、地球環境学)と3つの研究所(生存圏研究所、防災研究所、東南アジア研究所)が連携して、各研究科から選抜された優秀な学生を対象に実施されています。本プログラムを通して京都大学は産業界、行政機関、国際機関、国内外の大学等と協力し、安全安心分野の先進的・学際的な大学院教育を展開し、グローバル社会のリーダー的人材の育成を推進することを目的としています。

開催概要

開催日時 2016年3月3日(木)18:30~21:30
会場 京都大学東一条館
主催 京都大学学際融合教育研究推進センター
グローバル生存学大学院連携 (GSS) ユニット
共催 大成建設株式会社
協力 一般社団法人 企業間フューチャーセンター
関西フューチャーセンター

今回のワークショップは学生と社会人が有機的に対話するセッションです。
ここでは「フューチャーセッション」スタイルでGSSの学生と社会人が双方向のコミュニケーションを介し、バックグラウンドや専門の違いなどの枠を取り払って問題解決にフォーカス。共創による、安全・安心の新しいプロジェクトを創り出すことを狙いとして開催されました。

今回のプログラムを企画された、GSS特定准教授である清水美香さんの趣旨説明とスタッフの紹介に引き続き、GSSプログラムコーディネーターで防災研究所所長・教授の寶肇さんから、はじめの言葉を頂戴しました。

寶肇さん

GSSプログラムコーディネーター
防災研究所所長・教授
寶肇さん

「GSSは平成23年の12月にプログラムがスタートしました。
○巨大自然災害
○突発的人為災害事故
○地域環境変動社会不安(感染症を含む)
○食料安全保証
の4つの分野で安全・安心問題を考えて行くグローバルリーダーたるべき人材を育成していくプログラムです。グローバルリーダーですから、幅広い社会的俯瞰力、専門的実力、人間的魅力を備えた人材に育つことが大切です。本日の場は、社会的俯瞰力を高めるとともに、皆さんとコミュニケーションすることにより、人間的魅力を高めていくこと。学生の皆さんが、本日ご参加の諸先輩方との交流によりいろいろと学んでいただければ有難いなと思っております。
本日は私も何とかこの場に来ることができましたので、セッションにも参加させていただき、私自身も貴重な経験をさせていただければと思います。」

また、プログラムの中で産学連携を担当されている、医学研究科教授の木原正博さんからも

木原正博さん

GSSプログラム産学連携担当
医学研究科 教授
木原正博さん

「委員会として産学連携をいかにして推進するかということですが、そう簡単に企業の方を選ぶこともできず、お招きするのは難しいと悩んでおりました。
今日は貴重なチャンスをいただき、さらにインタラクティブに進行していただけるとのこと。予想もしなかったたくさんの外部の方々に来ていただいて感激しています。学生の皆さんにはぜひこの機会を活かしていただきたいと思っています。
本日参加の学生ですが、いろいろな意味でとても優秀です。厳しい環境にあえて飛び込んでゆく意欲のある学生達です。GSSの様々な取り組みの中で鍛えられていますので、彼らの優れた面も是非ご覧いただければ幸いです。」

と今回のセッションへの期待のお言葉をいただいた後、ワークショップがスタートしました。

インスピレーショントーク

各テーブルでの自己紹介やチェックインのあと、今回のワークショップの目的である「レジリエンスプロジェクトの創出」に向けてのインスピレーショントークがありました。

大成建設株式会社
ライフサイクルケア推進部 担当部長
小野 眞司 (おのまさし)

小野眞司

「「レジリエンスの未来」の取り組みを通じてわかってきたことは、変化を危機にし、深刻化してしまう要因はそれを受け止める、私達のあり方にあるのではないか?ということであり、これは新たな問いです。
レジリエンスをこのような切り口で捉えて行くと、対象にしなければいけないのは、災害だけではなく、いろいろな変化を対象にして捉えて行くべき概念なのではないかと気づかされます。
いろいろな事を振り返ってみると、地震、気候変動をはじめとして、経済、人口問題、移民、テロ等々、現代は私たちを取り巻くすべてのものが、これまで経験したことのない方向、規模、多様性、速度で変化しており、人々の価値観さえも大きく変わるという、 「新しい常態(NEW NORMAL)」に入っていると言えます。
いろいろなものに対してこれまでとは異なる発想やアプローチが必要になってきます。
今まで常識だったことことを変革して、我々自身の「NEW NORMAL」をつくって行く必要があるのかなと思っています。
前提が変わる社会では、これまでとは違うビジネスや生活が必要になり、私達のありようも変えて行く必要があります。つまり、ほんとうの意味での「イノベーション」です。それを生み出す力として、レジリエンスが必要になるという事なのではないでしょうか。」
と言ったお話をさせていただきました。

レジリエンスを創る10のアプローチ

レジリエンスを創る10のアプローチ

京都大学GSS
特定准教授
清水 美香(しみずみか)さん

清水美香さん

「レジリエンスはいろいろな定義をされていて、はやり言葉としても使われているため一部に誤解もあります。言葉を知っているだけでは、本質とは異なる所に向かいがちになります。
「折れない心」などとよく言われているので皆さんなじみがあると思います。研究分野では人個人、心理学などから始まっているのですが、人から、組織、コミュニティ、社会とすごく繋がっていることなんです。私は少し引いた視点、組織、コミュニティ、社会という視点からレジリエンスを見ています。

レジリエンスとは、その構造?

社会の変化と自然環境の変化は切り離せません。いろいろなところでその変化が連携している状態です。レジリエンスは、そういうところでどのように対応していったら良いのかという点で、ヒントを与えてくれる考え方であると言えます。
そもそも、今までの私達のやり方だけで、こういう変化を乗り換えることができるの? そういう所にレジリエンスを見て行く出発点があります。
重要なのは、レジリエンスを、はやり言葉としてではなく、どのように実践するかということ。レリジエンスアプローチは何事も「気づき(Awareness)」から始まります。アウェアネスからレジリエンスアプローチが始まるのだという所で、今回のフューチャーセッションを捉えていただければと思います。

1)繋がり重視アプローチ

2)システムズアプローチ

どのようにバランスをとって「木を見て森も見る」を実現するか? また、どのようにリソースを組み合わせてどのような仕組みを創るか? このような考え方がレジリエンスを創っていきます。言葉や概念ではなく、レジリエンスを自分たちの生活に加えて行く。いろいろな意味での「リンケージ」。短期・中期・長期も合わせた「時間」のスケールであるとか、さらに「空間」のスケールであるとか、それらを「プロセス」仕組みとして付けて行く。このような全体論的なことが関連しているということです。
これらがレジリエンスベースのプロジェクトデザインにおいて重要な事柄になります。

レジリエンスABCD

ワークショップ

ワークショップは、
○テーブルダイアログ①「今感じる未来のリスクとは?」
○テーブルダイアログ②「そもそもなぜそれがリスクになるのか?」

のテーマでそれぞれのテーブルで対話を進めていきました。

この対話を踏まえて、
「あなたが作りたい未来はどんな未来ですか?」
をテーマに、各自が思いついたキーワードを書き出し、元にチームを再編成しました。
最終的に8つのチームが出来上がりました。

○テーブルダイアログ③「未来のプロジェクトをデザインする」

最終のダイアログでは、出来上がった各チームごとに持ち寄ったテーマでレジリエントな未来を創っていくためのプロジェクトを検討。下記の8つの「レジリエンスプロジェクト」が生まれました。

◎1. Harmony Project

「非言語」というキーワードで、アーティストや科学者など、色々な人が集まって繋がり、いろいろな作品を作ることで、
○行動を変革する
○態度を変える
○共感を構築する
○コミュニティレジリエンスを創造する
の4つの目標を達成するプロジェクト。

◎2. 新しい豊かさの創造

新しい豊かさとは何か? 経済一辺倒の社会から新しい何かを・・・ということです。日本に関しては「縮小社会」小ささこそ豊かさなのではないか。自分達の地域にどんなすばらしい技術があるのか「地域の人間国宝」探し。また、独居老人を子供達が訪ねて歩くようなことができる世代間交流を目指したい。同時に見つけたことを町の寺子屋で発表する。地域という小さなユニットで発想して「関わり」「繋がり」を創って行く。

◎3. 複線社会(Double Track Society)

経済社会でマネーを稼ぐことは必要だが、その中で落ちていった本当に大切なモノを大事にするため、本業とは別に「ソーシャルビジネス」という「複線」を持つ。これは個人的セーフティネットにもなりうる。社会的にもどこかにその人が評価される価値があるということになり、結局は社会のセーフティネット=レジリエンスにもなる。そのために週休4日にすると早いが、制度化は難しい。まずは地域のプラットホーム作りが必要。

◎4. Risk Acceptance(リスクの受容)

段々希薄になってきているコミュニティ・レジリエンスを回生して行くために多くのヒューマンリソースを取り込んで行き、私達GSSの研究者がこれまで培ってきた知識や情報をシェアしていきます。自治体や、大学の人たち、そして将来を担う人たちとその家族など、ここ京都で、そんないろいろな人たちを巻き込んで、リスク・アクセプタンスを上げて行くプロジェクト。

◎5. となりの家の人にモノを借りにいけるつながりProject

困った時に助かる、柔軟に助け合えることが必要。世の中があまりにも便利になりすぎて、隣人に醤油や塩を借りに行くという文化が失われている。情報であったり、省資源、防犯という意味でもこのレジリエンスは必要。日本の伝統や侘び寂びを老人に学ぶこと。また、地域の消防団やマンションの理事会、地域のイベントなど、普段からの付き合いを大切にする。地域の人々、町内会の人達など地縁だけでなく、同志の人、いわば今回集まったような繋がりの中で実現していく。

◎6. HAPPY教育プロジェクト

リスクをなくすことは不可能、リスクがあることを前提に対処して行くこと自体を楽しむ=「HAPPY」。その為の教育、訓練を考える。ネガティブ←→ポジティブの言い換えの事例を集めて訓練をする。
例①発生した事象をプラス、マイナス様々に捉えた言い換えをする。
例②「3 Good Things」就寝前にその日良かったことを3つ書き出す。
具体的な行動に移す手順を見せ、実践できるまでの教育プログラム。実践が新たな教育者を生み持続的なスキームを可能にする。

◎7. 本音つながりプロジェクト

個人の弱さ、なかなか満足できない心、存在価値を見つけられないことが原因で孤立することが多い。「何でも話せる」「人のことを否定しない」など参加しやすい共通の理念をもち、一人一人が役割を持つことができるコミュニティーづくりが必要。自分の中で存在価値を感じながらいろいろな話を本音で言い合える仲になれるのではないか・・・。

◎8. Co-living Nature & Future

エコツーリズムに焦点を置き、環境保護を前提にしていながら外部から人を呼び込むことで、観光産業というビジネスチャンスが生まれるのではないかということです。
外部から来た人たち主導で進めようとしてもなかなか進まないと思うので、現地の人が主導し、意識と高めながら、巻き込みながら進めて行くことが大切。

■おわりに
全グループの発表の後、
締めくくりとして、大成建設の小野部長と、GSSの清水先生から終わりの挨拶がありました。

小野:
「皆さんお疲れ様でした。レジリエンスというテーマでやってきましたが、どんな感想をお持ちでしょうか?
今発表のあったプロジェクトが大成功している世界では、始めのダイアログで話をした「危機」が実際に起きたらどうなるでしょうか?
それが、今の現実と違っているかもしれないとしたら、それがおそらく今日考えたレジリエンスなのではないかと思います。レジリエンスは定義ではなくて文脈を感じるものだと思います。それを今日皆さんに体験していただく事ができたなら嬉しく思います。
そして、このプロジェクトにより「リスクがこう変わったよ」という事があったのであれば、次の「問い」ですよね。その時に大学はどうなっていれば良いのだろう、企業は、地域社会はどうなって行けば良いのだろう。そこに向かって我々は何をして行けばよいのだろう。このような「問いかけ」をどんどん継ぎ足し、広げて行っていただければと思っています。
その問いかけがこれまでとは違う問いかけになって来た時に、我々はレジリエンスの未来に向かって行けるのではないかと思いますので、ぜひこれ1回で終わらないようにして行きたいと思います。
皆様今日はどうもありがとうございました。」

清水:
「みなさん、予想以上というか、想定外に非常に色々な議論、対話をされていたのが印象的でした。その中でもやはり「コミュニティー」という言葉がひとつの大きなキーワードだなと思います。どのプロジェクトを見ても、コミュニティーという言葉が出てきているということは、皆さんの現在の問題意識や感じていることがよく現れていたなと感じました。
また、私は色々な文脈の中で、どうリソースを組み合わせるのか、どんな方法で人やリソースを繋げて行くのかということが、レジリエンスのキーになりますよ、とお話したのですが、それが、今日はいろいろな議論の中で見えていたのが、自分としても面白かったし、これがきっかけとなって、皆さんの「気づき」になり、大学の中で、企業の中で、また日常生活の中で活かしていただければいいなと思います。さらにそれらが本物のプロジェクトに展開すればすごく面白いと思います。
今日はありがとうございました。」