レジリエンスの未来

2014.11.28 フューチャーセッション「レジリエンスの未来4」開催レポート

開催概要

開催日時 2014年11月28日(水) 13:00~17:30
会場 丸の内 3*3LABO(さんさんらぼ)
主催 大成建設株式会社
連携・協力 株式会社フューチャーセッションズ
一般社団法人企業間フューチャーセンター
京都造形芸術大学外苑キャンパス
Planetary Design 講座(竹村真一教授)
当日のプログラム
13:00 - 13:15
1. チェックイン~問いの共有~
13:15 - 15:30
2. 多様な知識の集約
15:30 - 16:00
3. 新しいビジョン創造
16:00 - 17:30
4. プロトタイピング

参加者同士の対話を通じてレジリエントな未来社会を創造していくための
フューチャーセッション「レジリエンスの未来」。
これまでの3回のセッションを通じ、19のプロトタイプアイデアと7つのプロジェクトが創造されました。
今回のセッションから、また新たなレジリエンスの未来に向かう試みが始まります。

開催にあたって

フューチャーセッション「レジリエンスの未来4」が3×3 LABO(東京・千代田区)で11月28日に開催されました。
今回のセッションは3回シリーズ(レジリエンスの未来4・5・6)での展開を予定しており、最終セッションは2015年3月に開催される国連世界防災会議パブリックフォーラムの一つとしての開催となります。3.11を経験した日本だからこそ伝えられるレジリエンスの未来を、世界に向けて発信していく予定です。
こうした背景をもとに、さらに大きく新たな「レジリエンスの未来」づくりに向けて、新シリーズの第1回目となるセッションが始まりました。


多様な領域から約30名の参加者が集まり、新たなレジリエンスへの未来に向けてセッションがスタートしました。

[第1部] チェックイン~問いの共有~
―創造的回復と創造的適応でレジリエントな未来社会を創ろう―

産官学民の各セクターから約30名の参加者が集ったこの日のセッション。これまでの3回の試みを通じてすっかり顔なじみの方から初めての方まで参加者の顔ぶれは様々です。しかし、会場となった3×3 LABOからは「レジリエンスな未来社会」を一緒になって創り出そうという熱気が伝わってきます。
そんな参加者を前にして、冒頭のチェックインにおいて大成建設 耐震推進室の小野眞司部長が「問いかけ人」としてコンセプトを説明し、これから始まるセッションの方向性を提示しました。


問いかけ人:小野眞司
大成建設 ライフサイクル推進部 耐震推進室 営業部長

皆さんこんにちは!大成建設の小野と申します。
これまで行った3回にわたるセッションでは普段の暮らしに突然何かが起こった時、それを柔軟に受け止め対処していくには日常がどのようになっていればいいのかを考えてきました。その具体策が例えば防災や減災という視点でした。
しかし、今回のセッションでは突然起こるリスクが発生しても、1年後、2年後には、ちゃんと幸せな社会が復帰している。それには、現在からどういう方向に向かっていけばいいのか、という災害をストレッチした視点でレジリエンスの未来を創っていこうと考えています。

未来は何が起こるかわかりません。例えば、突然全てが破綻してしまうような事態は未来の暗黒面でしょう。しかし、一方で「未来を予測するもっとも良い方法は、未来を創り出していくこと」という言葉もあります。今回はこの言葉にあるように、予測不能なリスクが発生しても、しっかりと、以前よりもより良い方向に復興していける世界を創っていくためのアプローチにできればと思います。

レジリエンス「ハザードに曝されたシステム、コミュニティあるいは社会が、基本的な機構及び機能を保持・回復することなどを通じ、適切なタイミングで、効果的な方法で抵抗し、それを吸収・受容し、またそこから創造的に復興する能力。」

それがすなわちレジリエンスという能力だと思います。
レジリエンスにはいろんな日本語訳があり、よく「強靱性」という言葉が使われます。この強靱という言葉を辞書で調べると「しなやかで強いこと。柔軟でねばり強いこと。また、そのさま」、工学用語では「強度(硬度)と靱性を兼ね備えた固定状態」とあります。
日本語にしてしまうと少しわかりにくく、受けるイメージも変わってくるように思えます。
国連国際防災戦略事務局(UNISDR)では、レジリエンスについて「ハザードに対する抵抗力や受容能力であり、創造的な回復能力」といっています。長い説明になってしまいますが、この概念はとても腑に落ちます。

ハザードに曝され、大きなダメージを受けたとしても、そこから創造的に回復していける能力、変化してしまった環境にも創造的に適応して、以前よりもより良い社会を築いていける能力。これをレジリエンスと捉えていくと少しわかりやすくなりませんか?
今回のセッションでは、そうした「ありたいレジリエントな社会」を創造していきたいと思います。それには自分にとって一番大切なものは何か?ということをもう一回捉え直していく必要があります。
ですから、今日は思いっきり頭を切り変えて、レジリエンス思考にシフトしていきましょう。それではレジリエントな未来社会を創っていくためのセッションをこれより始めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします!

こうして、いよいよ4回目となるフューチャーセッションがスタートしました。ファシリテーターとなるのは、野村恭彦さん(株式会社フューチャーセッションズ)です。スタートに向け、野村さんがこれまでに行われたセッションの振り返りと同時に、新たなレジリエント社会の創造に向けたセッションを進めるうえでのプロセスを説明しました。


ファシリテーター:野村 恭彦氏(イノベーション・ファシリテーター)
株式会社フューチャーセッションズ 代表取締役社長 K.I.T.(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授 国際大学GLOCOM 主幹研究員

これまで私は、レジリエンスはもっと強い社会を築けばよいと思っていたんです。例えば、より強靱な建物といったハード的なアプローチなどがそうです。しかし、レジリエントな考え方をすると建物だけではなく、被災後の復旧における人々の協力であったり、バリューチェーンの中で何かが欠けた後にそれをどうやって補い合っていくのかなど、様々な考え方が必要になってきます。
そこで「ハードだけではない、一企業だけではできないレジリエンスな社会を創ろう」と呼びかけたことで、多様な参加者が集まるようになりました。そしていま、4回目のセッションに皆さんが招かれています。そういう形で、この「大きな問いかけ」に対して今までとは違うステークホルダーが集まりました。
こうした多様なメンバーでシステム変革を起こす可能性を個々で創り、参加者同士がここでお互いを理解し合うような対話を行っていくことがフューチャーセッションの目的です。

こうしたセッションを進めるにあたって、まずは本日のフレームを説明します。
現状というレイヤーには理想あるいはレジリエントに向かっていく流れがあります。例えば来年、首都直下型地震が起きた場合にどんなことが起きるのか。例えばそれを備蓄で対応するというのがこの現状ラインです。そして、それをさらにストレッチし、備蓄が必要な状況が1ヶ月続いた時にどうなっていくのか、それはなぜ発生するのかといった視点で被災後の未来を考えてみます。つまり、想定外が起きた時の未来です。
そして第2部では、備蓄があれば何とかなるという発想からの大きな転換を考えます。備蓄で困るなら、備蓄しなくてもよい未来を考えてみる、といったものです。その時、自分自身や自分の会社が世の中に貢献している様子を思い描き、そこからバックキャストする(未来のある時点から現在を振り返る)ことでレジリエンスな未来に向けて今から準備することを考えたいと思います。それが第2部の流れとなります。

未来に対するスタンスの図

皆さんそれぞれの強みがあると思います。会社の強み、地域の中で持っている強み、個人的なスキルの強み。そういった強みをどのようにレジリエンスな未来で発揮していくのかというところから新しい現在を思い描いていただき、様々なプロジェクトを見出していくのが狙いです。

セッションの方向性とプロセスの説明を受けて、まずは隣り合った参加者同士が「3.11で感じたレジリエンスの必要性」について話し合いました。そこでは「個々のテーマはあるが、いざとなるとそれがなかなか繋がらない。それには日頃からの繋がりが大切」、「壊れた家も大切だが、その後もそこに住み続けるという発想から物事を組み立てる重要性を感じた」など、様々な意見を交わされました。
次いで3つラウンドに分けて対話が行われ、さらに様々な意見や知識が共有されていきました。


参加者同士の和やかな雰囲気のもとセッションが進みます。


全員で対話し、問題を共有。参加者同士の対話が進むと、徐々に会場も熱気を帯び出します。

【第1ラウンド】
被災後に一番困ることは何でしょうか?

ここでは被災後の未来について自分事として対話を行います。「被災後に一番困ることは何でしょうか?」がテーマです。ビジネス・地方&都市・家庭・地域の4つのエリアに分かれ、その中でさらに3、4人づつ2グループに分かれて話し合いが持たれます。4つのエリアで1テーマを1枚の付箋に書き留めていきます。

【第2ラウンド】
被災状態が超長期化した時、さらに困ることは何でしょうか?

次にグループの1名を除き、残りのメンバーが他グループに移動して、最初の問いを共有しつつ今後は「被災状態が超長期化した時、さらに困ることは何か?」について話し合います。

【第3ラウンド】
どうしてそういう困り事が起きてしまうのか?

第3ラウンドは元のグループに集まり「なぜそういう困り事が起きてしまうのか?」あるいは「なぜそれに対してそれにレジリエンスではない状態になってしまうのか?」について、その構造的な要因を話し合います。

こうやって3つのテーマについて書き留められた付箋を今度は壁に貼り、参加者全員で問いに対する自分事を共有します。ここではその一例を挙げてみましょう。

ビジネス・地方&都市・家庭・地域という4つの領域に分かれて、意見交換が行われました。


各テーマに対する「自分事」が壁面いっぱいに貼られ、問題意識の共有化が図られました。

◎ビジネス

【被災後に困ること】
情報遮断・デマ・設備のリカバリー・指示系統の混乱・二次災害の対応・情報の真偽・テロ・安否情報・サプライチェーン・社員の安否不明・役所が機能しない・決済できない・部品が届かない・風評被害で商品が売れない・社長やリーダーが不在・優秀な社員を失う・帰宅困難者が発生

【さらに長期化すると困ること】
資金のショート・サプライチェーン回復のめどが立たない・関係者の再調整が必要・機能の移転が必要・ビジネスの存続・与信問題・経営が悪化する・会社の存続危機・ビジネスエリアの治安悪化・社員が集まらず仕事ができない

【困り事の要因】
一人ひとりで何ができるかが不明・人を担保することができない・失うことがあたりまえの準備ができていない・想定以上のリスクを吸収できるか考えられていない・BCPが作られていない・対応策にとどまっている・電力への依存度が高い・自給自足ができない・都市の相互依存性が脆弱性を高めている・平時の効率性を過度に追求してしまっている

◎家庭

【被災後に困ること】
連絡が取り合えない・お金・会いたいけど会えない・避難所・集合場所・食べ物・生命の維持・トイレ・安全に寝る・マンションの点検・通信・お風呂・ペット・ライフライン・帰宅・飲み物・行動の判断

【さらに長期化すると困ること】
住む家がなくなる・お金・衣食住・移動・仕事を失うかもしれない・健康管理・教育・仕事

【困り事の要因】
お金がないと生きられない・都市はスペースがない・人口が過密すぎる・サービスや衣食住が手に入らない・避難場所では住めない・安全安心な場所・家族が失われる・交流がない・知り合いがいない


話し合い、書き留めていく。「もしも」のリスクを顕在化させる作業が着々と進んでいきます。

◎地方&都市

【被災後に困ること】
交通網・防寒・ライフライン・情報・食べ物・飲み物・状況不明・誰が助けるの?・いつ助かるの?・どのように助けるの?・リーダーは誰?・消防団・町内会・企業の自衛・助けるための道具は?・お年寄り

【さらに長期化すると困ること】
おむつ・エアコン・お風呂・トイレ・食糧不足・在宅避難の方々・水不足・クスリや医療の不足・感染症や伝染病の蔓延・次々と死者が出る・凍死・助ける人も疲れる・略奪が始まる

【困り事の要因】
非常時モードの考え方や暮らし方ができていない・地産地消が形成されていない・ミニマムな生活ができていない・地域コミュニティができていない・助ける人対助けられる人の対立・一方的な援助や被援助の仕組みは続かない・流通に依存した暮らし・食べ物が周りにない・自然の恵みがない・分かち合う習慣がない・依存体質

断片から共通項が生まれていきます。

◎地域

【被災後に困ること】
自分たちで道路を直すことができない・コミュニティで集まれない・医療や電気、水、通信などの都市インフラが壊滅・情報が取れない・仕事がなくなる・活動が失われる

【さらに長期化すると困ること】
食料不足・情報把握の必要性・連絡メールができない・ホテルに仮住まい・輸送インフラ・都市を自分たちで回復できない・経済ストップ・お金が役立たない・暴徒化・地方に疎開できるだろうか・個人で何をするか・心理的な影響・ストレス・仕事ができない・生活が成り立たない

【困り事の要因】
年齢差・Webのつきあいで助け合うことの限界・水の確保・徒歩で移動・ネットワークの準備・医療の不足で弱者が死ぬ・集落が点在しているため人が高齢化しても住む場所を変えられない・自立して生きる生産機能がない・消費のみに依存している・人口密度が高すぎる・必要な量を供給できない

参加者同士がそれぞれの思いや考えを出し合い、被災後の行動や問いの数々を書き留めたポストイットが壁いっぱいに広がると同時に、その1枚1枚からあらためて参加者の「気づき」が伝わってきます。

そしてファシリテーターの野村さんより、この一連の作業のまとめに対する感想が発表され、第1部が終了となりました。

たくさんの課題や問いが出ましたが、一つひとつを別々に捉えることもあったでしょうし、互いの要素が絡み合っていると感じる部分もあったのではないでしょうか。
我々はビジネスの現場にいるのと同時に家庭、地域のステークホルダーでもあり、また都市や地方を担う一員でもあります。そんななかで様々な困り事が長期化し、深刻になっていきます。しかし、その要因を考えていくと、その底流にはかなり共通項も見られたのではないかなと思います。
こういった様々な要因を取り除いていき、改善するために何をしていけばいいのか、レジリエンスを高めるために根本的に変えていく必要があるものは何だろうか? ということがこの前半戦の問いかけではなかったかと思います。


何をすればレジリエンスが高まるのか?
を自分自身に問いかけた前半戦。