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[issued:2006.09.20]

耐震補強のデザインソリューション

-ファシリティの新しい価値創造に向かって-
特集:デザインと耐震_その1

耐震補強へのニーズの質が明らかな変化を示してきている。
既存建物の耐震性能を向上させるということが単品的に求められる段階から、リニューアルやコンバージョンなど建物のバリューアップのためのソリューションとして、外装・内装のデザイン、設備の再構築など、いわばトータル段階にシフトしてきてしている。


4. 

耐震補強の「社会学」


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「残す」ための耐震補強



 
林:
建物のバリューアップでは、耐震補強と外装、内装のリニューアルは同等の価値を持つべきものとなるわけですが、最近増えている建物保存のケースを考えると、その同等の関係もすこし違って見えてきます。

歴史的価値がある建物や文化的な価値の高い建物の場合、まずは保存ということが考えられ、そのための耐震補強はどの程度必要で、どの様に考えるのか?といったことが最優先事項として検討されるのではないでしょうか?
そういった建築の社会性を考慮することも、実は建築デザインの仕事として考えるべきで、耐震補強についても、建築や街を災害から守るということばかりでなく、文化や社会への貢献という視点からも考える必要があると思います。


小山:
その場合、なにを尊重し残すのか?ということが重要だと思います。
いま話に出た「保存」ということであれば、その対象として外装のデザインを残すことが優先されることもありますが、耐震補強を優先させ外装の「部分」を保存するという場合もあると思います。
また、同じ保存といっても、現状そのままを残す場合もあれば、オリジナルへの復元も含めて新たな素材や技術で作り直す手法もあります。
また、再利用・再活用を考え、採光性や通風性などを向上させるために、いまの外装を部分的に変更することもあるでしょう。


鈴木:
「保存」は確かに難しいですね。
建物そのものを残したいのか、オフィスやホテルなどの用途を持つ施設として継承したいのか、それも建物の社会的価値や収益性など何を基準に判断するかによっても大きく違います。
耐震基準の変遷

耐震基準の変遷
大きくは1981年の改正による「新耐震基準」への転換だが、それ以降も改正がなされている

谷田:
建物の耐震性能を規定する法律も今後の地震被害によっては変わるかもしれませんね。それに対応するように、耐震補強の技術も進化させていかなくてはなりません。これも建物に必要な耐震性能が社会的な要求に影響される例だと思います。


高島:
保存が可能か、あるいはどこまでの耐震補強が可能かどうかの判断材料のひとつに建物躯体に使われているコンクリートの寿命の問題もあります。


鈴木:
コンクリートは明治時代からありましたが、関東大震災以降に急激に多く採用されてきた素材です。ということは、コンクリート建築の大半は日本では、まだ90年以上の時間を経ておらず、その耐久性、寿命に関する経験も実のところは少ないと思います。
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見直される「耐震」という価値




小山:
しかし、コンクリートの劣化を抑える技術は既にあります。重要なのはコンクリートの劣化という技術的な問題ではなく、建物自体の利用価値、文化的・社会的さらに経済的価値をいかに残していくということなのではないでしょうか。

リニューアルにおいては、建物個々でその価値をどう見るかという判断がつねに求められています。まずは建物がそれぞれに持っている多様な価値に注目することが必要であり、そのひとつひとつをクライアントの方とともにどのように捉え、どのように継承や向上をしていくかを考えていきたいですね。


谷田:
特に商業施設では、集客やブランド表現のために外装や内装が重要であり、構造と外装を切り離して考えるケースが多いと思います。魅力的な商業施設づくりのためには、耐震補強を見せたほうがいいのかどうかという判断も、その商業施設の収益性やブランド価値との整合性が根拠となります。
最近、当社も手がけることが増えてきた海外ブランドのフラッグシップショップでも、こちらは新築もリニューアルもありますが、同様な議論がされています。


林:
耐震補強を行う際、それを見せる、見せないは、建物個々への要求やコンセプト次第なのでしょう。



谷田明義:アーキテクト
谷田明義:アーキテクト

谷田:
リニューアルの場合は従来からある重い外装をはずすだけでも耐震性の向上につながる場合もありますよね。軽快な表現を求めることは耐震性能にもよいということもあります。


小山:
時代の価値観、顧客の要望によって耐震補強の評価は左右されるということでしょうね。これまでは見過ごされがちでしたが、耐震性は建物価値の主要要素であり補強はバリューアップのためのキーソリューションとなってきているのではないでしょうか?
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