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[issued:2008.01.16]

特集:耐震補強の現場 その2

技術力、現場力、そして人間力で実現する「使いながら」

いまや一般化しつつある「使いながらの耐震補強」。
建物を事業活動の場として使いながら耐震補強は、建物の診断力、補強の設計力に加え、確かな「現場力」によって実現します。


2. 

現場でのきめ細やかな配慮は不可欠


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都心部での中間階免震レトロフィット



杉崎:
使いながらの耐震補強に関して、2007年での注目プロジェクトとしては、中間階の免震レトロフィットで補強した明治屋銀座ビルがあげられます。


栗林:
同じ東京圏での免震レトロフィットのこれまでの事例と言えば、豊島区役所、旭洋ビルがあり、明治屋銀座ビルは2007年8月に補強(免震化)が完了しました。
何れも、人通りも交通量も多い都心部での「使いながら」の工事でした。


杉崎:
明治屋銀座ビルで免震レトロフィットの採用が決まった理由はなんだったのでしょう。


栗林:
採用理由のひとつは、ビルが立地するのが国内でも土地の価格が最も高騰した場所ということもあり、テナントビル、不動産としての価値を高めたいという資産価値の観点からの判断があったとお聞きしています。

周辺には有名海外ブランドが集中して進出しているエリアでもあり、ますます価値と魅力が高まっているエリアになってきています。しかし、建て替えはその間のビジネスの中断を考えたりすると難しい。
一般的な耐震補強や制震による補強も検討しましたが、使いながらを考えると外周部に補強材を取り付ける事になります。そうすると窓や開口部がふさがれてしまうなど、外観だけでなく室内環境の快適性にも問題が出てきます。



杉崎:
技術面から見るとどうだったのでしょう。


栗林:
1階の柱での「中間階免震レトロフィット」でした。
中間階免震の場合はすぐ上と下の階には若干影響が出てしまいますが、丁度地下1階のテナントが改修しようとしており一時的に閉店するのでその工事が可能。また明治屋様の利用フロアが1、2、3階ということもあり、4階以上のテナントの方々にはこれまで通りご利用いただきながら、ビルの所有者である明治屋様の移転のみで工事ができることがわかりました。

また免震採用のために必要な隣の建物との間隔、クリアランスも確保できていたのも助かりました。


杉崎:
免震レトロフィットでは大地震時に免震装置に生じる大きな変位に対応するため、階段、外壁、エレベータなどを免震対応型にするという難しい工事もありますね。


栗林:
今回のケースでは、元々設置されていたエレベーターは1台でした。
4月から6月の3ヶ月間は工事のためにエレベータが一時的に利用できなくなるため、その間、上階テナントの方々には階段で上下移動していた抱くようお願いしました。
工程も調整して暑くなる前に終わらせる様にしましたが、利用者の方には恐縮するところです。
免震レトロフィットの採用ポイント

免震レトロフィットは単に耐震性能を確保するだけでなく、経営戦略、BCPなどに大きなメリットをもたらす可能性を秘めています。

ハイブリッドTASS構法の免震効果

画期的な長周期化を実現し、高い免震効果を誇るハイブリッドTASS構法。
今回はその効果を実際の地震で計測されたデータを基にご紹介します。


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設計、施工一体の取り組みで



杉崎:
使いながらということで、現場担当者はテナントや近隣との交渉・調整にも尽力されたと聞いています。東京支店としてのバックアップやフォローはどのようなものだったのでしょう。


栗林:
免震レトロフィットは技術的に難しい工事ですので、本社の建築本部と連携して構造や施工に関する技術支援を積極的に行いました。もっとも、オーナーの明治屋様、テナントや近隣の方々への説明や要望への迅速・着実な対応を直接担うのは作業所長をはじめとした現場担当者になります。支店、現場の衆知を集めて実直に対応させていただきました。


杉崎:
現場での対応とは、具体的にはどのようなことですか?
一般的には騒音、埃、振動、臭気対策などが言われていますが。


栗林:
ひとつは工事を行う時間に関してお客様とのコンセンサスをしっかりとることです。
夜間や土日工事はどうしてもコストアップに繋がってしまいます。コストと「使いながら」のバランスを考え発注者の方だけでなく、テナント、近隣への影響や道路使用の許可との関連を見据えた、昼夜を使い分けた施工計画が重要になります。


杉崎:
立地によってはかなりの困難が予想されますね。

栗林:
もうひとつは設備関係の工事です。
「耐震補強」は構造を対象に行うものですが、使いながらの補強ではその過程で、配線、配管を部分的に止めては、付け替える作業も必要な事があります。場合によっては一時的な停電となったりやトイレなどが使用できない期間が発生することもあります。コンセントは使えても照明が使えないといったことなどもあります。

こうした事は一時的なものであっても、建物は様々な使われた方をしていますので、その影響範囲を早期に把握し、お客様にお知らせすることが必要です。そのためには時間単位、場合によっては分単位でのしっかりとした工程管理ができていなければなりません。


杉崎:
配線や配管など建物ができた後に変更されている可能性の高いものは、図面だけでは分からず、現場に入ってみないと分からないことが多々あります。
建物の使い方を利用者の立場から理解して施工計画を組み立てていくことも必要で、現状把握から対策の実施まで、まさにトータルな「現場力」が問われますね。


栗林:
そうです。
そのためには、計画段階、設計段階から施工部門がプロジェクトに関わる必要性があると思いまし、構造設計にも現場の目線が必要だと思います。

実際には、当社での耐震診断で現地調査を行う場合はコンクリートの抜き取り等の工事が発生しますので、その段階で施工担当者がつくことになります。その診断を担当したものが補強も担当するということで、診断の時点から建物の使われ方や利用者の動線など、「使いながらの補強」における状況を把握していきます。


杉崎:
同じ担当者が診断から補強までやるところがお客様の安心につながりますね。


栗林:
今後さらに力を入れたいと思っているのは、経験のある担当者の育成ですね。
耐震補強をはじめ、リニューアルでは設備系の知識と経験も重要になりますが、現状をみて課題を把握して的確に対処すには、やはり経験がものを言います。

免震レトロフィットとなると、これまで動かなかったものを、免震の変位に対応させるように「動く」様にしなければなりません。その難易度はさらに高くなります。

あきらめない地震対策

建物を使いながら耐震補強を行うには、どのように計画を進めていけばいいのでしょう?

非構造部材や設備の地震対策を考える

事業継続のカギを握る設備や非構造部材の地震対策。その効果を最大限に発揮するにはどのように取り組むべきかを検討していきます。


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作業所長インタビュー1

お客様との対話が円滑にすすめる免震レトロフィット 明治屋銀座ビル担当 金子徹(かねことおる)副所長

■耐震補強ではコミュニケーションがものを言う
使いながらの補強では、工事から発生する騒音、振動、臭気などへの万全の配慮が求められます。免震レトロフィットの工事は、柱を切って免震装置を柱の上下に挟むように設置するため、柱等構造体を改造する作業ではどうしてもある程度の騒音が出ます。工事中もこのビルを使い続ける各テナントの方々をはじめ近隣の方々への配慮といった各関係者との工事に関する話し合いが重要になります。
特にテナントの方の営業を重視し、そのスタイルやスケジュールに応じて工事を計画しました。両隣のビルには飲食店があった為、特に臭気、騒音による影響をを回避するよう、開店時間に応じて工事時間を制限しました。
また、免震装置を柱に設置する層(免震層)を境に階段、外壁、エレベータを途中でいったん切る作業もあります。エレベータの改修工事は3ヶ月を必要としたため、上層階のテナントへの動線と避難動線の確保も課題でした。こういった、工事に関することひとつひとつを関係者に説明し話し合うことが不可欠ですが、ビルの3階を現場の事務所として利用させていただいたことが大いに助かりました。

■コミュニケーション方法としての試験施工
建設工事ではまったく騒音を出さないことはありえません。一般の方は電動ノコギリやボードへのビス止めの音でも気になると思います。しかし、こうしたことは、特に個人個人の感覚に左右されるため、この音なら迷惑じゃないだろう、という基準が曖昧です。
そのために、他の現場でもやることですが、試験的に工事をしてみて、音はもちろん振動、臭気などの工事の影響体験にご協力いただく様にしています。テナントや近隣の方と工事関係者が共通の認識をもつようにして、「これなら大丈夫」とか「これは困るので工事の方法や時間などを調整して欲しい」などの声をいただくということは、我々に取っても工事というものを再認識する貴重な機会になりますし、また、建物を補強するという事をテナントや近隣の方にも認識していただくよい機会にもなります。さらにはそれは、オーナーの方の社会的な信頼感にもつながっていく様に思えますので、こうしたオープンな取り組みというのは今後ますます重要になっていくのではないでしょうか。
免震レトロフィット(免震補強)

今ある建物を使いながら免震建物に!
免震レトロフィットは、建物を使いながら基礎部分や中間階の柱等に新しく免震装置を組み込むことによって、既存の建物を免震建物に生まれ変わらせる「免震補強工法」です。


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