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Special >> 技術力、現場力、そして人間力で実現する「使いながら」
浸透してきたBCの取り組み
杉崎:
この議論の冒頭で触れましたが、最近ではリニューアルあるいは耐震補強の目的を、
事業継続性の確保や向上を目指した提案を求められることが増えています。
栗林:
そのために建物の現状を調査してみましょう、という提案もお客様との有効なコミュニケーションに発展する場合もあります。
杉崎:
工場の耐震補強が多くなっているのも、企業としての存続を考えた事業継続という目的意識の高まりだと考えられますね。
栗林:
2004年10月の中越地震、さらには昨年、2007年7月に発生した中越沖地震では、一つの部品メーカーの被害が、そのメーカーだけではなく上下のサプライ・チェーンにも大きな損害を及ぼし、話題になりました。
実際、部品メーカーの復旧を発注元のアッセンブルメーカーが支援するなど、影響の大きさ、深刻さをあからさまに実感することになりました。
杉崎:
事業継続性は工場だけに関わるものではありません。オフィス、商業施設あるいは病院、ライフライン産業など、官民を問わず事業を支える施設すべてに関わるテーマです。
栗林:
なかでも工場の補強はたしかに増えています。日本の製造業の厳しさの現れでしょうか。事業継続性は企業の信頼性にも大きく関わることから、生き残りやさらなる発展のための耐震補強とも言えると思います。
杉崎:
お客様の事業への影響の大きさを考えると、お客様との信頼関係が如何に重要かということになります。
新潟中越地震における企業の被害状況から、事業再開に影響を与えた要因(ビジネスインパクト要因)についての分析結果です。
今後の事業継続管理(BCM)のあり方と事業継続計画(BCP)策定の方向性を探ります。
そこで生産されるモノや規模により異なるワークフローやプロセスを持つ生産施設。
地震対策についても、一般のオフィス等とは異なる「トータルエンジニアリング」の視点での計画が必要となります。
お客様のビジネスを支援する
栗林:
お客様の信頼を得るのは大変ですが、失うのは簡単です。
お客様の事業を支えていこうとするには、まずお客様の事業を理解し、価値観を共有することがとても重要だと思います。
杉崎:
特に、建物がそのまま利益を生む場所になっている商業施設などの場合は、工事期間中の売り上げ確保等、オフィスビル以上の課題がありますね。
栗林:
商業施設は集客力を絶対に落とすわけにはいきません。もちろん使いながらの補強となります。そのためのアイデアは耐震工事本体においても必要ですが、特に仮設計画の工夫が大切です。
例えば、松屋銀座様の場合、補強と外装リニューアルを行った訳ですが、お客様とのコミュニケーションの中から様々な仮設のアイデアが生まれました。
杉崎:
使いながらの状況、お客様の要望や特性に応じた仮設の工夫を、もっと耐震補強やリニューアルの提案に加えていきたいですね。
栗林:
これまでの実績を通じて、使いながらの耐震補強での仮設のノウハウが社内にずいぶんストックされてきました。耐震補強における
「現場力」の発揮ということから言えば、作業現場での仮設に関する提案もお客様により高い満足度を提供できる側面ではないでしょうか。
様々な仮設の工夫で、工事中もお客様のビジネスを支援
仮設の防音パネルに展開したデザイン
開いていくジッパーによりリニューアルオープンをイメージさせる仮設デザイン
仮設の歩道上の屋根は集客にも貢献
施設用途での課題
杉崎:
お客様の業種業態、利用者特性、建物用途の特殊性を見据えた提案も必要になっています。例えばこれまで大成建設で取り組んだ耐震補強の件数は1000件ほどあります。これを用途別に見るとマンションはあまり多くはないなど、偏りがあります。
栗林:
マンションの場合、共用部だけで補強ができればいいのですが、補強がそれぞれの居住部分にまで及ぶと実現が難しい場合がほとんどですね。要望は多いのですが実現に到るまでの過程での意思決定、コンセンサスをとるのががなかなか厳しいケースが多いようです。
杉崎:
病院も耐震補強のご相談が増えてきています。
医療施設は社会性の高い分野でもあり、災害時の時こそ必要になる施設です。
補強中も機能を停止することができないため、高度な使いながらの補強が必要となります。
栗林:
使いながらの要件と災害時の機能維持を考えると、補強であっても建て替えであっても
「免震」など
事業継続性を考えた高い耐震性能が必要だと思います。
医療分野はニーズの多様化や競争が激しい分野です。一時的な対処だけではなく、医療ニーズの変化、サービス・事業の継続性までを視野に入れ、リニューアル計画、施設運用計画も含めた包括的なご提案をすべきと考えています。
杉崎:
そうですね、そういう意味ではもっと社会全体に対しても耐震補強の重要性、社会性をアピールしていくこともわれわれ建設業の役割ではないかと思います。
耐震改修を取り巻く環境が整備され、耐震化への取り組みが進む一方で、補強に踏み切れない建物が少なからず見受けられます。その原因と解決策を解説するとともに、ベストな耐震補強には何が必要かを考えていきます。
建築の世界ではアーキテクトとエンジニアとのコラボレーションが、世界各地でイノベーティブな建築に結実している。大成建設の建築でも実感できるその波は、建築の魅力をあらためて示している。コラボレーションの現場から生の声をお届けする。
作業所長インタビュー2
■営業を最重視した工事・仮設
事業の発展のための補強工事であるからこそ、工事中だからといって集客や売上を落とすわけにはいきません。銀座松屋様の耐震補強は、内部での営業に影響が少なく、また外装リニューアルと同時に行うことによる工期短縮を目指し、耐震フレームとブレースによる外壁部分での補強としています。基本的な工事はすべて夜間工事とし、さらに銀座松屋様の集客を妨げることなく、ブランド価値を損なわない、銀座の美観にも影響が少ない、そしてもちろん安全性の高い仮設を工夫しました。
例えば充分な高さを確保した歩道構台は、圧迫感のない構台下空間の確保と同時に、照明を明るくすることで人の流れを促し、雨宿りや待ち合わせ場所としても利用されていました。こういった工夫を重ね、
工事中でも入店客集が減らなかったとのご評価をいただきました。
■使いながらの耐震補強は地道な作業
使いながらの補強では、営業時間中に騒音、振動、臭気を発生することは絶対に許されないのはもちろん、その影響が残ってもいけません。
主要工事は夜間としても、工事部分との間仕切りは昼間、お客様の目に触れることになるため本設レベルの完成度で仕上げ、工事中の綿密な巡回はもとより、夜間工事の終了後も臭気や漏水、埃等のチェックを日課としていました。外装リニューアルのため外壁は一時的に撤去するため風の影響もあります。夏などは空調効率にも影響しますので、充分な対策が必要です。
技術的には、アンカーレス工法である「タフシステム」を採用して、アンカーを打つ際の振動、騒音、埃、清掃の手間、などの既存躯体への悪影響を回避する様にしました。
工事関係者が通る動線と来客動線も完全に分離し、工事を感じさせない計画に注力しました。
以上のような使いながらの耐震補強を万全にする地道な方策は、銀座松屋様と同じ目線を持つよう努め、銀座松屋様のお客様を尊重するという発想が基点になります。お客様にはいつもと変わらず買い物していただけるよう工事を計画し、その計画を店長様へ説明、報告。綿密なコミュニケーションが確実な補強を可能にします。
耐震補強を外装リニューアルのデザインにも取り込んでいます。
あと施工アンカーをなくした、静かな耐震補強です。