「建物の耐震性能に不安がある、しかし建物内でのビジネスを止めることはできない。」
耐震補強の現場においては、こういった要望はますます増えています。
古い設計基準による、耐震性能の低い建物では地震の被害で利用できなくなるばかりか、そこで業務を行っている企業の存続を脅かすまでになることが現実に起こっています。さらにそれは被災企業だけの問題ではなく、サプライ・チェーンへの上流、下流へも波及するという被害の拡大性にも繋がってくる事がわかってきました。しかし、被害防止の第一歩でもある「耐震補強工事」のためにサービスの提供や製品の生産など日常的に行われている業務を止めることは難しいとう現実もあります。
こういった事業継続性の観点から
「使いながらの耐震補強」は一般化、常識化してきたといえるでしょう。そのためには的確な「診断」、多様な条件をクリアする「設計」、そして建物を使っていただきながら安全に補強工事を実現する「施工」の三拍子が揃わなければなりません。
今回の特集は、ご好評をいただいた前回に引続き「耐震補強の現場」をテーマに、設計、計画の現場から施工の現場へと視点を移した内容でお送りしたいと思います。
実際の補強の現場での様々な取り組みと、それを支える「力」が、どの様な課題をどのように解決していくのか?作業所長の生の声を織り込みながらお届けしたいと思います。
杉崎:
議論のきっかけとして最近の耐震補強の状況をお話ししたいと思います。2007年度上半期を見ますと、耐震診断の件数は昨年度と同じくらいですが、耐震補強の件数が昨年度よりも2∼3割増えています。
栗林:
補強内容として特徴的なことはありますか。
耐震推進部部長 杉崎良一
杉崎:
規模的には小型のもの、建物用途としてはこれまで事務所ビル中心だったのが、工場の補強件数が増えています。また、2006年度では、リニューアル工事の約20%が耐震補強に関連していました。その他、学校や宿泊施設等の案件も大型のものが目だった様に思います。
東京支店建築第三部 部長 栗林功
栗林:
業種業態に関わらず
リーニューアル時には必要があれば、同時に耐震補強が求められているということですね。
杉崎:
企業におけるBCPの構築、つまり「事業継続性の確保」に関する要求の高まりも背景にあります。
栗林:
都市というスコープからも事業継続性は重点課題となっています。
2007年の春に策定された「耐震改修促進計画」は、どの都道府県のものも都市全体の耐震化を見据えたものになっているのではないでしょうか。特に地震発生時に閉ざされてはいけない緊急輸送道路沿道の建築物の耐震化などは重点的に進めていくケースが多いようです。
杉崎:
今後も都市全体の事業継続性を確保するために、個々の建物の耐震性能を高める動きは活発になるでしょう。それも使いながらの耐震補強ということになりますね。
都市は企業の集合体ですから、それの舞台となるファシリティの活動は止められません。
施設に求められる機能も高度化しており、
「使いながら」の耐震補強やリニューアルというのは古くからある新しい命題であるとも言えそうですね。
では、具体的な事例からご紹介いただけますか?

「待ったなし」で進む行政の地震対策への取り組み。その傾向と対応について概観するとともに、何が必要か、どうすべきかについて考えていきます。