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[issued:2007.09.19]

特集:耐震補強の現場 その1

ユーザー本位の耐震補強を目指して

耐震補強の進化には、単にお客様から提示された課題に応えるだけでなく、ファシリティにかかわる様々なステークスホルダーの立場から、それぞれが抱える重要な問題点を明らかにしていく必要があります。
今回の特集では、お客様にとっての最適解を追求している大成建設の「耐震補強ソリューション」の多様な側面、担当者の意識・実感、そして実際の取り組みについてお届けしたいと思います。


3. 

テーマ2:耐震補強への期待と現状


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2:耐震補強への期待と現状



 
成田:
耐震診断を依頼される理由は、端的に建物の耐震性能に不安があるからという場合が多いのですか。

小山:
耐震性能自体への危惧というよりも、建物が古いから心配というケースが多いですね

杉崎:
最近は1981年以前のマンションに関する相談が多いですね。建築基準法の改正によって新耐震基準が施行された1981年6月以前に建築確認を受けた建物には耐震性能に不安があるということが、かなりのお客様に認知されています。
マスコミ報道の影響などもあるのでしょう。

小山:
なかでも5∼6階建てで築30年近くたっているような古いマンションのお住まいの方たちの不安が大きいように見受けられます。危険性の度合いを知らないので、ぜひ知りたいということで診断を要請されます。しかし、診断結果が出て危険性が認知されたとしても、マンションは個人の所有物ではないので、すべての住人のコンセンサスをとって補強の話をまとめるのが難しいですね。

杉崎:
マンションの場合、提案の対象は住人の方が組織する管理組合になります。補強工事も共用部だけであればまだ住人全体のコンセンサスがとりやすいようですが、各戸の中にまで入って工事する、補強の結果として居住環境の変化が予想される場合は難しいようです。確実な判断をしていただくためにも、診断結果の分かりやすい説明と、より具体的な補強方式を併せて提示することがポイントになります。
補強計画診断の報告書例
大成建設の補強計画診断報告書例
診断結果とともに、基本案としての補強計画と概算費用が提示される

 
小山:
マンションに限らず、診断結果と耐震対策の両方を説明するのが、お客様の理解を助けるようですね。

杉崎:
数から言えばオフィスに関する相談が多いのですが、国民生活の安全性を確保するという目的から、様々な施設に中でもまずは住宅から耐震性能を強化するという国の指導の影響もあると思います。

小山:
マンションに話を戻しますが、コスト負担や工事期間中の生活への影響への配慮ももちろん重要ですが、耐震性能の向上だけでなく快適性向上、省エネ、バリアフリー化なども兼ねた、住人の方にとって価値のあるリニューアルとしての提案が必要なのではないでしょうか。また、コンセンサスを形成しやすいように、勉強会を開いたり、第三者のアドバイザーがつくといった社会的な仕組みなどがあると、補強の検討はより着実に進むと思います。



成田:
社会動向としては、1981年の新耐震基準以前の新耐震基準を満たさない建築物に対し積極的に耐震診断や改修を促進する耐震改修促進法が施行されたのが1995年12月、そこから耐震補強への注目が高まり12年ほど経ちますが、実態はいかがですか。


杉崎:
実際の耐震補強への取り組みには、まだまだバラつきがありますね。
 
成田:
傾向としては、積極的に耐震補強に取り組んできた企業や組織には、施設戦略を経営戦略の中に明確に位置づけてファシリティマネジメント的な見方、つまり施設と経営や社会との結びつきを強く意識しているところも増えてきているように思います。


※平成15年住宅・土地統計調査等の集計をもとに国土交通省推計
(「第3回住宅・建築物の地震防災推進会議」資料公開(2005.6.10)より)

小山:
保有施設に自覚的な企業や組織が積極的だということでしょうか。オーナーが意思決定に明確なリーダーシップを発揮する、あるいは意思決定が一本化しやすい場合も補強への取り組みが積極的ですね。分譲マンションやテナントが多い商業施設などはステークホルダーが多く意思決定までに手間がかかるでしょう。また、24時間、人がいて施設機能を停止あるいは低下させられない医療施設などは、その建物の使用性からして補強工事を行なうことが難しい。いずれも施設の経営との関わりや社会における位置づけにより大きく左右されています。

杉崎:
ここ数年、工場の耐震診断、補強が増えています。多くの工場の場合は、機能は現状維持、リニューアルなど付加価値を検討しない補強だけの場合が多いので比較的ローコストでできるということもあるのでしょう。しかし、操業を停止できない工場、特に食品工場のように工事中でも衛生面などに配慮しなければいけない工場の補強は難しいものがあります。

小山:
ところで、最近は耐震診断の結果が出るとそのまま補強工事へ進むケースが増えているという印象を持っていますが、全体的にはどうなのでしょう?

杉崎:
当社の実績では、阪神大震災以後12年間で、耐震診断を約1800件、補強は900件行っています。補強の半分は当社の設計施工物件ですが、残りの半分は他社の設計あるいは施工、診断も他社というものも多くあります。中には図面の残っていない物件もありました。用途としてはオフィスが一番多く、オフィスの場合はリニューアルと同時にといったことが多いのも特徴です。昨年は診断だけで170件、補強工事までにいったのが64件もあり、確かにこれまでの倍以上のペースにになっています。

小山:
図面がない場合は建物を調査して図面を作成するところから対応することもあります。そのために必要な技術や技術者の質も当社が評価されている要因のひとつだと思います。

杉崎:
社会的には地震対策に関する意識の向上や、経済状態が良くなってきたということも後押ししているのではないかと思います。

小山:
不動産取引の重要事項説明に耐震性能に関する事項が盛り込まれました。また、特殊建築物の定期報告にも同様に「耐震性」に関する項目が追加されています。さらに最近ではBCPの策定、BCMの徹底を国が促進しているということも、耐震補強への積極性を高めていると考えられます。


 
杉崎:
企業においては事業継続性を確保することへの社会的な使命感といったものも強くなっており、ますます耐震補強などの地震対策への注目が高まっています。

杉崎:
お客様には、設計者としての専門的なスキルをお持ちの方もいらっしゃれば、建物に関する専門知識をお持ちでない方もいらっしゃいます。高度な診断技術・能力と提案スキルをつねに鍛え、お客様とのコミュニケーションを通じて設計者への信頼感をいかに獲得できるか、われわれのプロとしての自覚や姿勢が問われるところですね。
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