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[issued:2006.10.18]

アーキテクトとエンジニアの競演

特集:デザインと耐震 第2章
-コラボレーションは建築の原点-

建築の世界ではアーキテクトとエンジニアとのコラボレーションが、世界各地でイノベーティブな建築に結実している。大成建設の建築でも実感できるその波は、建築の魅力をあらためて示している。コラボレーションの現場から生の声をお届けする。


2. 

テーマ1:外装デザインとしての構造設計


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ブランディングとしての建築



水谷:
 前回の対談では、既存建物の耐震補強を建築内部の活動を妨げないで行なえるメリットがある外壁部分での耐震補強が取り上げられ、その補強は同時に外装リニューアルにもつながることから、外装のデザインと構造の密接な関係が話題になりました。

 さて、今回は、新築の場合での外装のデザインと構造設計のコラボレーションについて議論したいと思います。

 では、まず、最初に、外装に関してデザインと構造が新たな試みに挑戦したプロジェクト、昨年の12月に竣工したMIKIMOTO Ginza2を題材に話を進めたいと思います。



スタディ模型 (伊東豊雄事務所提供)


スタディ模型 (伊東豊雄事務所提供)


スタディ模型 (伊東豊雄事務所提供)

スタディ模型 (伊東豊雄事務所提供)


新井:
 MIKIMOTO Ginza2は、コンペ段階から伊東豊雄建築設計事務所との共同設計プロジェクトでした。地価の高い銀座という立地では、その経済性を考えると、施主からの敷地一杯の建物を建てたいという要望はまったく妥当です。しかも、ミキモトのブランディングを代表する建物であるため、そのデザインでは独自性を追求したいということで、構造も単純なラーメン構造ではないものと考えてはいました。ただ48mの建物を外壁のみで支えるという伊東先生と佐々木先生のアイデアには驚きました。


早部:
 14m×17mという計画地で最大限の床面積を確保するために、柱を使わずに外壁で建物全体を支持する構造をいろいろと検討しました。
 最初は細い三角トラスで外装に凹凸のある案、折板構造による案などもありました。
 構造設計に関しては、佐々木睦朗構造計画研究所と協力して進めました。構造の方向性が決まったところで、伊東先生から数枚のスケッチが提示されました。それを構造解析をしながら検討することの繰り返しでした


新井:
 外装デザインのイメージとして、2004年に竣工した、先生の作品である「まつもと市民芸術館」の、手作りガラスが象嵌されたGRC(ガラス強化繊維プレキャストコンクリート)板の外装表現もアイデアの原型としてはあったようです。


林:
 外壁で支持する建築は、無柱空間がベストである商業施設にふさわしい建築と言えますね。しかし一般的にショップ建築では構造体が主張せず、構造体の外部に設けられた外装がブランド価値の表現などメッセージ性を持つことが多いのですが、MIKIMOTO Ginza2では外装の構造とデザインを分離していない、つまり構造=外装デザインの建築ですね。


早部:
 MIKIMOTO Ginza2では、ジュエリーや真珠貝から生まれる泡を表象する、7種類の三角形からなる窓のパターンを平面的に展開し、それを折って四角柱のチューブにするという手法で外装を考えてあります。
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構造的リダンダンシーとデザイン


全体構造アクソメ
外壁は、厚さ6から12ミリの鋼板でコンクリートを挟み込んだ複合構造。コンクリート自体が大きな熱容量を持つため、耐火被覆を軽減することが可能。


新井:
 MIKIMOTO Ginza2で採用した、計画地の4面の外周に壁面を建て建物を支持する壁構造は、箱型に建物をがっちり固めるため、構造的に極めて安定的です。必要とされる構造的な性能に対して余裕(リダンダンシー)があり、充分な耐震性能を確保した上で、なおかつ開口の自由度が高く、外装の表現の可能性を大きく拓いてくれます。


早部:
 またMIKIMOTO Ginza2では、2枚の鋼板の間にコンクリートを充填する「鋼板コンクリート造」というものを開発・採用していますが、鋼板ではさまれたコンクリートがさらに構造的なリダンダンシーを高めています。
 また施工は、コンクリートを充填する型枠の役割となる鋼板をユニット化し、現地でフラットにつなぎ合わせました。その施工精度の確保のためには、かなり高精度の溶接技術が必要でした。


小室:
 建築構造的には、建物の自重を直下の地盤に伝え、耐震要素は付加的に組み合わせるということが素直に思えますが、MIKIMOTO Ginza2は与えられた空間を最大限に利用するため外壁が、自重と地震等による横方向の力をともに支える、つまり鉛直支持要素と耐震要素が一体となり、耐震性能の確保と無柱空間を両立させた架構となっていますね。


早部:
 免震も検討しましたが、免震を採用した場合、地震発生の際に、免震装置によって建物の揺れは緩やかにしかし揺れ幅は大きくなる、その揺れを許容するために隣接する建物の間に50cm程度のクリアランス(隙間)を確保しなければいけません。しかしそうすると、建物がひと回り小さくなる、床面積が減るという理由から、免震ではなく、建物全体を強固に固めることにより耐震性能を確保しようということになりました。

左:新井健太(プロジェクト・アーキテクト)
右:早部安弘(シニア・エンジニア)


新井:
 また、施主からは1階の開口をできるだけ大きくとりたいといった要望や内部階段が欲しいという要望がありました。


早部:
 床を抜くと建物が座屈しやすいということもあり、座屈性状に関しては相当気をつかいました。

林:
 無柱空間ということになれば、内装の自由度も高まる訳ですね。


高橋:
 しかし、無柱空間を活かしきるインテリアデザインは難しいですよね。店舗の内装などではディスプレイする関係上、どしても柱や壁が内装要素としては必要になりますから。


新井:
 スケルトン&インフィルという考え方のもとに、建築躯体と内装を分離して建築を設計しますが、MIKIMOTO Ginza2のように、構造=外装デザインとして構築されたスケルトンがある場合は、内装にも影響し、その分解点が難しいと思いました。
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