水谷:
この6月に竣工した
大成札幌ビルでは、高い耐震性能の確保や環境配慮型建築として、新しい試みを展開しています。
小室:
耐震性能の向上ということでいえば
TASMO(TAisei Smart suppression system with Monitor)をはじめて実用化したことが大きな特徴になっています。
TASMOは建物の全フロアを垂直に貫いて建物の自重を地盤に伝える「壁柱」と、それをつなぎ地震エネルギーを吸収する極軟鋼でできた「境界梁」、地震力による建物の変位を抑制する「オイルダンパー」で構成されています。さらに常時「境界梁」の健全性をモニターし、部品の疲労状況を把握、建物全体の耐震性能を維持するモニタリングシステムも導入された新しい制振システムです。
もともとはTASMOは建物内部のコア部分で構成される計画でしたが、北国であることから断熱効果を高めることも考慮し、外壁を構造体として利用することになりました。
小室:
計画当初は耐震、制震、免震の各案を検討しましたが、大成札幌ビルのある場所は商業地で建物が密集し敷地に余裕がなく、建物周囲にクリアランスの必要な免震は無理でした。
新井:
先ほどの話のように、
MIKIMOTO Ginza2も同じような敷地条件で同じ理由により免震は採用されていません。
高橋:
TASMOが耐震の部分をすべて負担してくれるため、柱などは建物重量を支えるだけですむため細くすることができます。建物内部には広く使い勝手のよい空間が確保できることになります。
大成札幌ビルでは
TASMOを外壁に使うことで建物重量も壁柱に負担させています。その結果、無柱で18.6mスパンを実現し、フレキシブルで快適なオフィス空間とすることができました。
左:高橋章夫(シニア・アーキテクト)
右:小室努(プロジェクトリーダー)
水谷:
この建物も
MIKIMOTO Ginza2と同様、外装の耐震・構造要素が外装のデザインとなっていますね。
高橋:
設計者としては、耐震性能や環境性能の確保だけでなく、シンプルなモチーフの組み合わせで外装をデザインしたいと考えました。例えば、3.9mの階高に対し、壁柱+窓の1セットの幅が同じ3.9mとするなどといったことです。
林:
TASMOの壁柱を外装に使うとすると、構造的な制約で他のデザインにするのは難しくありませんか。
早部:
外装の壁柱の特に幅が狭くなっている裾の部分のデザインが特に難しいのではないかと思いますね。
高橋:
実際にはこのプロジェクトでは
TASMOを前提に10通り以上のデザイン案を考え検討し、現在のデザインになっています。
確かに制約条件といえば、例えば、「地盤との接点を80から100cmにする」ということがありました。これはTASMOの動作と建物の自重を地盤に伝えるため必要な要素などを勘案した、構造的な必要性からの制約です。
しかし、デザインに関する不自由さは感じませんでした。検討案の中には窓の間隔をランダムにとった案等も検討しました。
新井:
大成札幌ビルは3階までがテナントスペースですよね。1階にダンパーが露出するのはテナントから見るとどうだったのでしょうか?
高橋:
一般的にテナントはビルの外部に存在をアピールしたいはずです。
もちろん1階からは、当社の社員や関係者、テナントに関連する人々が出入りします。そのためにも、窓の間隔や壁柱の裾の絞込み、ダンパーの見映え等、ディティールのデザインは相当考えました。
水谷:
ここであらためて
TASMOの可能性について考えたいのですが、外装に
TASMOを使う場合、どれくらいの規模、どのような平面形状まで可能なのでしょう?
初期デザインの一つ
決定稿の元になった3.9mモジュールスタディ
小室:
実際は敷地の条件や施主の要望も含め、プロジェクトをひとつひとつクリアしていく中で可能性を探っていくことになると思いますが、
TASMOはコア部分にも、外装にも使えることをから考えると、コアと外装のダブルチューブ構造なども可能になってきます。
建築の性能やデザインにとって、今後
TASMOが提示できる可能性は大きなものがあると思います。
コア型TASMO
外壁型TASMO
CASBEEのSクラスのスーパーエコ性能とTASMOによる高い耐震性能が生み出した、最先端のローコストフロントオフィス
TASMOは建物にかかる風や地震のエネルギーをすべて吸収し、揺れを緩和する究極の制振機構です。