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[issued:2006.10.18]

アーキテクトとエンジニアの競演

特集:デザインと耐震 第2章
-コラボレーションは建築の原点-

建築の世界ではアーキテクトとエンジニアとのコラボレーションが、世界各地でイノベーティブな建築に結実している。大成建設の建築でも実感できるその波は、建築の魅力をあらためて示している。コラボレーションの現場から生の声をお届けする。


4. 

テーマ3:ヒトの力、コラボレーションの力


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建築の力強さの再発見

新井:
MIKIMOTO Ginza2大成札幌ビルも、外装デザインと構造が一体となっていることにより、建物を支える力の流れが外装を通じて表現され、そこで感じられる一種の力強さが、それぞれの建築の魅力になっているのではないか。もっと言えば、建築の根源的な魅力をあらためて見せてくれているのではないかと思います。


水谷:
 いままでのラーメン構造+カーテンウォールという建築では、カーテンウォールが取り替え可能でしたが、このふたつの建築は構造と外装が一体なので取替えはできませんね。数十年たっても外装のみのリニューアルはできない。
 ということは、このような建築はモニュメンタルな存在として、ブランド価値や企業価値を持続的にアピールする存在として位置づけられているということですね。


林:
 古いヨーロッパのレンガ造の建物は外装のみを残したまま、内部の床や壁を抜く大胆なリニューアルをして使い続けています。社会的な存在である街並みを変えることなく、ライフスタイルの変化に柔軟に対応しながら建築を活用していくという例もありますね。


新井:
 MIKIMOTO Ginza2は、「ミキモト」というブランドの、モノを長く使い続ける、大切にするということを重視する姿勢が、建築の魅力と一致しているのではないかと思います。銀座4丁目のミキモトビルも建設後40年も経過しています。


高橋:
 絶対的なもの、不変の力強さ、そこが魅力。
 大成札幌ビルも長寿命建築であることを大前提とし、当初から外装の表層だけを後年リニューアルすることを前提としていません。







水谷:
 MIKIMOTO Ginza2にしても大成札幌ビルにしても、デザインと構造とのコラボレーションがあってはじめて可能になった建築だと思います。このようなコラボレーションにはさらにどんな可能性があるのでしょうか。


早部:
 MIKIMOTO Ginza2では、意匠のCADデータを構造が解析し、構造的に弱い部分を意匠に返してデザインし直してもらう。さらに、鋼板ユニットを製造する部門(ファブ)までも含めて何度もやりとりして設計しました。構造的なリダンダンシーが高かったのでコラボレーションの余地が大きかったということも言えます。


林:
 少し意地悪な質問なのですが、デザインと構造がコラボレーションせず、構造解析技術を駆使し構造合理性を徹底的に突きつめていくことによってでも、MIKIMOTO Ginza2のような開口のパターンがつくれたのではないでしょうか。


早部:
 構造的な力の流れがそのままデザインとなるということですね。それは本当に建築デザインとして美しいのか疑問です。


新井:
 構造的な強弱がそのまま開口の大小やカタチになるのは必ずしも最適解ではないということですね。
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コラボレーションが生み出すイノベーション




早部:
 構造力学優先ではなく、意匠のデザインセンスを最大限活かすことが、構造の役割であり、すぐれた建築につながるのではないかということを、構造設計者としていつも思っています。コンピュータでつくった建築はつまらない。


新井:
 経済や構造の合理性だけを優先させると、窓のレイアウトが単純なパターンになってしまいがちです。
 窓の形状、大きさ、数は、施主の要望、意匠、構造との数限りないやりとりで決められていったというのがMIKIMOTO Ginza2の設計プロセスでした。どうも、コンピュータが進化すればするほど、建築設計のプロセスはますますインタラクティブになり、より人間の介在する部分が大きくなっていくのではないかと感じています。


林:
 大成札幌ビルの開口部やファサードはどのようなプロセスで決めていったのですか。



大成札幌ビルの外壁に打ち込まれた断熱材



高橋:
 ラーメン構造+カーテンウォールではなく、外装と構造を一体化させるとデザインの自由度は多少なりとも少なくなるでしょう。
 しかし、大切なことは、建築デザインを何で見せるか、どう決めるかということだと思います。 

 マテリアル、プロポーションはもちろん、ストラクチャー、耐震性能など建築をトータルで考えることが建築デザインの魅力を高めることになるのではないか。構造に関係なく分離して、建築が自由なだけではかえって魅力がないと思います。そして、設備もデザインのトリガーになることもあります。大成札幌ビルのコンクリート打ちっ放しは躯体蓄熱輻射暖房にも利用しようという設備とのコラボレーションから導き出されたものです。


新井:
 意匠だけが優先される建物も、構造だけで決定された建物も面白くない。さらに、設備も大きく関わってくる。構造、デザイン、設備のバランスが建築設計の原点であるといことですね。
 そんなコラボレーションがなければ大成札幌ビルの高度な耐震性能の確保とCASBEEでSクラスを達成するという目的を同時達成できないと思います。


林:
 建築に限らず、あらゆる分野で、課題やテーマを部分に分解して考えるのではなく、全体として考えることが求められているのではないでしょうか。分業ではなくその境界を超えることが新しいモノゴトを生み出すように思います。

小室:
 そうですね。モノづくりの精神というのはその境界を超えるということなのではないかと思います。既成の組織や役割も枠を超えるということがモノづくりの真髄なのではないでしょうか。


林:
 まだ成熟していない技術であれば既成の枠組みに囚われない自由な発想が新しいモノゴトの創出につながると思います。
 成熟した技術はブラックボックス化していき、その組み合わせでソリューションを提供していくという方向に向かおうとしますが、成熟した技術であってもその原点を問い直し、ブラックボックスから開放し再構築をしてみるという手段でさらにその可能性を引き出すということもあると思います。イノベーションといわれるものは、未成熟な技術を進化させこともあれば、成熟した技術を組み合わせ再構築することから生まれてくるものもあるのでしょうね。


高橋:
 そのためには建築、構造、設備のコラボレーションが不可欠だと思いますが、確かに手間がかかります。しかし、それはぜったい面白いし、建築の新たな可能性や根源的な魅力を惹き出すことにつながると思います。コレボレーションこそが、建築のイノベーションの重要な源泉、イノベーションが発生してくる「時空」であり「場」なのではないでしょうか。

 


*CASBEE(Comprehensive Assessment System for Building Environmental Efficiency):

建築物の環境性能で評価し格付けする手法。省エネや省資源・リサイクル性能といった環境負荷削減の側面はもとより、室内の快適性や景観への配慮といった環境品質・性能の向上といった側面も含めた、建築物の環境性能を総合的に評価する。


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