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[issued:2005.09.25]

特集:BCMに取り組む

急速に普及するBCMへの取り組みと日本型防災の限界

特集:BCMに取り組む 第1回目は、インターリスク総研の小林誠さんに、BCMに対しする国内外の動向と国内企業の取り組みの状況、そしてこれからのBCMのあるべき姿について伺いしました。

小林誠ポートレイト株式会社インターリスク総研
総合企画部
主席研究員
小林誠

1. 

日本におけるBCM理解の現状と課題


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いま注目されているBCM(Business Continuity Management:事業継続管理)。
それは、地震・洪水・台風などの自然災害、火災、テロなど多様な脅威が、事業の継続性に対する被害・影響(ビジネスインパクト)の分析から、事故・災害による損失を最小限に抑える「減災計画」、損失を迅速・確実な「復旧計画」、そのための資金計画までに及ぶ計画立案と実現の仕組みづくりを指します。BCMベースとなる計画のことをBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)と言います。

特に日本では最大の損失を招くであろう「地震リスク」への取り組みが重要になっています。
過去100年、地球全体でおきたマグニチュード7以上の10%は日本および日本近海で起きています。最近のたび重なる大規模地震は、地震対策の見直しを多くの企業に迫っており、BCMへの関心や取り組みが活発になっています。
しかしBCMに対する誤解や曲解も多いようです。BCMへの関心や意欲が高まっているいまだからこそ、BCMの基本やそのポイントをあらためて確認することで、確実に効果を発揮するBCMが構築・運用できるのではないかと考えました。
今回は「特集:BCMに取り組む 第1回」として、「急速に普及するBCMへの取り組みと日本型防災の限界」と題し、国内外でBCMのコンサルティングや啓蒙活動をされている、インターリスク総研の小林誠さんに、BCMに対しする国内外の動向と国内企業の取り組みの状況、そしてこれからのBCMのあるべき姿について伺いしました。

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急激に進むBCMへの理解と取り組み



■BCMへの関心がこんなに急に高まるとはお考えでしたか?

小林:
昨年11月の中越地震以降、一気に高まったようですね。正直言って私自身はもっとゆっくり進むものと思っていました。欧米が先行していると言われていたこの分野も、国内の経済産業省や内閣府が、民間と連携した防災力向上などのというという視点から、企業のBCMに関するガイドラインを一気に発表し始めています。発表時期も当初の予定より早くなっています。


■具体的にはどのようなものなのでしょう?

小林:
今年3月に、経済産業省が「企業における情報セキュリティガバナンスのあり方に関する研究会」が中心になってまとめた『事業継続計画策定ガイドライン』を発表。8月には、内閣府の中央防災会議が主催した「民間と市場の力を活かした防災力向上に関する専門調査会」企業評価・業務継続ワーキンググループから『事業継続ガイドライン第一版(最終案)』を公表しました。ただ対象となる脅威が、前者はIT事故、後者は地震とかなり限定的です。
■国内ではいつごろから関心がもたれたのですか?

小林:
発端は一昨年の石油タンクの爆発などの産業関連の事故が続いたあたりかと思います。
当時はCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)の観点からの関心でした。企業活動の社会的な側面のみがクローズアップされ、事業継続性という観点は無かったと思います。それが中越地震を機に、その影響の大きさも影響したのでしょうか、企業自身の責任で起こす事故などのリスクと、自然災害など外部から突然に訪れる脅威のいずれもが企業経営そのものに損失を与えるということに、はっきり気づき始めてきたのです。
被災時、安否確認、人命の安全確保はもちろん重要ですが、そこに終始せず、それらはすべて事業継続、早期復旧のためと考える方向性を持ち始めた様に思います。
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日本流BCM発想の限界


■ということはますますBCMに取り組む国内企業は増えるだろうとお考えですね?

小林:
そうだと思います。だからこそなんですが、BCMの見方に関して注意を促したいことがあります。
BCMは事故や災害から事業継続性を守る「予防」と、発生後できるだけはやく事業所や工場の機能を回復しようという「復旧」のふたつの要素から構成されています。ところが国内企業のほとんどは予防に関する計画しかもたず、具体的な復旧計画をもっていないのが現状です。


■不思議ですね、どうしてなんでしょうか?

小林:
日本社会に根付いている原因主義がそうさせているのだと思います。
先ほど触れた経済産業省や内閣府のBCMガイドラインもそうですが、地震、IT事故、火災、テロなど損失をもたらす脅威、原因にばかり関心をもつ傾向にあります。そうすると脅威に対する予防が優先されます。

しかし、欧米で生まれたBCMは結果主義です。

事業所の中に入れない、工場の生産ラインがとまってしまったなど、原因は問わずその被害・損失と事業継続性の関係を考えるので、復旧をどうするか、そこからさらに損失を最小限に食い止めるための予防と考えていきます。つまり予防から復旧までをトータルにBCMに取り組むことになります。



■根本的な取り組み姿勢の違いですね?

小林:
そうです。
原因にばかり目を向けていると事業継続性からかけ離れていくように思います。
経営者が急死し経営判断がストップした場合はどうするのか?実際、その時は経営者が死んだ原因より、経営判断能力をどう持続させるかを考えるでしょう。
あるいは少子高齢化社会の中での経営はどうするのか?起こってしまったこと、確実に起こりつつある脅威に関しては、その原因からより結果から考えざるをえないと思います。


■しかも影響は多様に広がり、損失は大きくなっています。

小林:
地震のような大規模な災害はそのインパクトが大きいため、企業は事業継続性への脅威として意識しやすく、それによる被害・損失の軽減への取り組みが具体的、積極的になります。
しかし、9.11のように超高層ビル全体が倒壊するなどとはあの時まで誰も予測していませんでした。もちろんその被害・損失などまったく予想できていませんでした。
BCMは、あらたな被害・損失が発生するつど修正が必要になります。
中央防災会議
民間と市場の力を活かした防災力向上に関する専門調査会HP

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