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[issued:2005.09.25]

特集:BCMに取り組む 第1回

急速に普及するBCMへの取り組みと日本型防災の限界

特集:BCMに取り組む 第1回目は、インターリスク総研の小林誠さんに、BCMに対しする国内外の動向と国内企業の取り組みの状況、そしてこれからのBCMのあるべき姿について伺いしました。

小林誠ポートレイト株式会社 インターリスク総研
総合リスクマネジメント部
主席研究員
小林誠

2. 

復旧の段階分けとプライオリティ


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復旧とは何か?

■日本のBCMに欠けているとお話になった「復旧」とは何をすることなのでしょう?

小林:
国内企業は何らかの形ではBCMに取り組んでいると言えますが、そのほとんどが地震対策であり、消防が求める防災計画の程度です。それも今までは人命保護が中心の「予防」と発生時の「緊急対応」がほとんどです。
そこで私たちが国内でBCMのコンサルティングを行う場合には、
1)事業継続性の観点から既存のBCMや防災計画の見直すこと、
2)復旧のフェーズを新たに考えること、

という2段階を踏まえることになります。

PR4

全面回復に向かう5つのフェーズ:PR4


■一口に「復旧」といっても,実際には様々なフェーズがあると聞いています。

小林:
そうです。概論的な話になりますが、ここでご説明しましょう。
日本では「復旧」でひとくくりにされていますが、「復旧」にはいくつかの段階があります。
図は事業継続のPR4と呼ばれている事業継続の段階を示したものです。
1)予防PREVENTION、
2)緊急対応RESPONSE、
3)業務再開RESUMPTION、
4)業務回復RECOVERY、
5)全面復旧RESTORATION
とありますが、ここで復旧にとって重要なのは「業務再開RESUMPTION」、「業務回復RECOVERY」、「全面復旧RESTORATION」の3つのR、3つのフェーズです。
■復旧の3Rについてご説明ください。

小林:
まずは復旧の第一歩である「業務再開RESUMPTION」のフェーズです。
企業の存続に関わる、最も緊急度の高い業務(MCA:Mission Critical Activity)を最優先に再開させることが目的です。
MCAとは「それを失うと企業の財務状態に直ちに影響を与える業務」のことであり、財務への影響以外に、ブランドイメージ失墜やシェア喪失、顧客との関係悪化などの影響を加味して考慮されます。
さらに、緊急度の高い業務を優先させるため、優先度の低い業務の再開をあえて「後回し」にすることさえあります。さらに、MCAを明文化しその再開をスケジュール化することが重要になります。例えば
Level 1:最優先 0-12時間
Level 2:優 先 12-24時間
Level 3:普 通 24-72時間
Level 4:優先度低 72時間超
といったように業務再開の時間目標を設定します。



■次に来る業務回復:RECOVERYとはどのようなことなのでしょう?

小林:
「業務回復RECOVERY」とは、MCA、最も緊急度の高い業務や機能が再開された後、より緊急性の少ない業務まで範囲を拡大して業務を再開することです。この段階ではまだ臨時的な体制、本来の拠点ではなく仮設の拠点により業務運営を行っている状態でもあります。


■では目標である全面復旧RESTORATIONとは?

小林:
「全面復旧RESTORATION」は、本来業務を行うべき元の場所で、その後の業務を長期的に継続できる、最終的な体制への移行フェーズです。
さらにリストラ、人員の増強、最新鋭設備導入等により、損失をできるだけ早く取り戻すために、事業所、工場の能力を被災前より増強させ、より優れた拠点構築を目指す場合もあります。
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RTO(目標復旧時間)を定めることの重要性

■全面復旧は早ければ早いほど損失が少ないということですか?

小林:
全面復旧をできるだけ早くするために「冗長性」という考え方があります。
例えば、1分1秒も事業をとめないとすると、いま企業活動の拠点としている事業所や工場とまったく同じ規模・機能の施設を別の場所に持つ、二重化しておくということです。欧米の企業、特に金融関連ではいつでも元の拠点とまったく同様に稼動できる状態でもうひとつ拠点を持つケースが、9.11以降急増しているようです。
ただし、それには膨大なコストがかかるため、復旧対策費用と時間が経てば経つほど増大する損失のバランスから、元の拠点か別の場所の似たような機能をもつ社内施設での業務再開を行う方が多いようです。


■ということは復旧するまでにかけられる時間の設定がポイントといえそうですね?

小林:
そうです。
私たちは復旧の目標をRTO(Recovery Time Objective目標復旧時間)と呼んでおり、その設定とそれを厳守する覚悟が重要だと説明しています。
それも、広域災害の場合は3日間以内の完全復旧、局地的災害の場合は24時間以内の復旧または代替生産、と言ったようにきめ細かく決めていくことになります。



投資をしておかないと復旧までの時間がかかる



対策がないと復旧まで時間がかかり、損失も大きくなる



BIAにより対策投資と損失の最適値を考える

■RTOはどのように決めていくのでしょうか?

小林:
一般的にBCMの基本となるBCP(事業継続計画)の策定は、
「業務分析」→「リスク分析」→「BCM方針策定」→「BCP策定」→「BCP検証」
の手順をたどります。
RTOはその中核となるものです。
そのスタートは業務分析、リスク分析なのですが、これがなかなか難しい。自分のいまやっている仕事を書き出してみなさいと言われても、意外とできないものです。
しかし、業務が見えてきてはじめて、様々なリスク、被害の事業に対する影響の分析、BIA(Business Impact Analysis:ビジネス影響度分析)が可能になります。それがRTOを決めることになります。経営、業務が具体的に分かってないとBCM、BCPはできないのです。


■RTO決定のプロセスを具体的にご説明ください。

小林:
まず復旧対策費用と復旧時間の関係を想定します。
費用がかかる順に「自己保有の設備で回復」→「外部調達で設備を回復」→「代替の職場は用意しない」となります。費用をかけないとその分、復旧までの時間がかかります。

一方で、何も対策をしないで、復旧までの時間が経てば経つほど回復すべき損失の財務負担は増えていきます。

そこで「復旧対策に必要とされる費用」と「復旧までの間に発生した回復しなければならない損失」の最適値に該当する時間を、RTOとして定めるための分析をします。
これをBIA(Business Impact Analysis:ビジネス影響度分析)と呼びます。このように災害対策は投資効果、財務負担の問題でもあるのです。
■RTOの設定は実際のBCPにどのように活かされていきますか?

小林:
RTOを設定すると、次はタイムラインを持ったBCPマニュアルをつくります。
RTOが設定されてはじめてできるとも言えます。
1時間後、2時間後・・・各々の時間までに誰が何をすべきか、の時系列のマニュアルへと展開していきます。また、全社一本ではなく部門別のマニュアルも並行して作成することでより具体的で詳細なBCPが構築できます。

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