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[issued:2005.9.16]

特集:BCMに取り組む 第1回

急速に普及するBCMへの取り組みと日本型防災の限界

特集:BCMに取り組む 第1回目は、インターリスク総研の小林誠さんに、BCMに対しする国内外の動向と国内企業の取り組みの状況、そしてこれからのBCMのあるべき姿について伺いしました。

小林誠ポートレイト株式会社 インターリスク総研
総合リスクマネジメント部
主席研究員
小林誠

3. 

着実な事業継続を実現するために


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BCMはすべてのステークホルダーのために


■BCMの取り組みを進めていく上で、今後ますます重要になってくるのはどういったことでしょうか?

小林:
まず企業は多様なサプライチェーンのなかで活動しているということに着目するということです。
自社は無事でもメーカーや物流会社の業務が停止すると事業ができなくなることがあります。特にカンバン方式を採用している企業は在庫を持たないため、サプライチェーンの損失は致命的です。また、自動車メーカーなど下請けが多い業種では、下請けにBCMを求める動きも大きくなっています。しかも「2日以内に復旧、取引再開」といった極めて具体的なRTOを要求するケースも出ています。


■企業をめぐる関係全体をBCMの対象と考えるということですね?

小林:
社内にも目を向けてみましょう。
BCM的な発想が最初に浸透したのは社内の情報ネットワークやシステムを担当しているIT部門でしたが、いまやBCMは営業部門、生産部門にも求められており、企業全体を巻き込む重要な経営課題となっています。
そのためにはまず、社内でビジネスインパクトの分析を行います。
社員全員にインタビューかアンケート形式で業務内容や想定被害・損失について聞いてみます。このプロセスは社内におけるBCMの普及啓蒙にもなります。
しかしBCMには最適解というものはありません。
つねにPDCAサイクルで進める体制をつくっていきます。またモデル事業所をつくりテストしてから全社に展開するという企業が多いようです。社内外も含めたすべてのステークホルダーとの連携・協力体制がBCMには不可欠ということです。


■これまでの防災計画やリスクマネジメントとは方法が大きく違うようですね?

小林:
BCMは、これまでの専門家に依存してきた防災計画と違い民主主義的です。
実際の復旧に当たっては、事業のどの部分を優先させて復旧させるか、その優先順位をあらかじめ決めておかないと現実的ではありません。また、社内を平等に扱わないということにもなりかねないので、社内の合意形成が不可欠です。BCMの根幹には、透明性、公開性、関係者の同意すなわち多数決の論理があります。
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企業規模とBCM

■BCMへの関心は企業の業種業態、規模によって変わるのでしょうか?

小林:
エネルギーや情報のインフラ産業、金融関係は以前から様々な取り組みをしていました。最近は流通、メーカーの取り組みも加速しています。サプライチェーンの断絶が大きな損害につながることが明らかになってきたこともあるでしょう。
BCMはその目的からしても、企業規模に関しては本来あまり関係ないはずなのですが、大企業の方が積極的です。中小企業に関しては、大手の下請けをやっている企業であれば取引先の要請によりBCMに取り組まざるをえなくなっています。
しかし問題は資金力です。
地場に市場を限定している中小企業であってもBCMは必要なのではないかと思われますが、ボトルネックになっているのは予防や復旧のための資金調達です。


■中小企業のBCMへの取り組みやBCP構築を支援する動きはないのですか?

小林:
被災後に復興資金を貸し付ける制度はいままでもあったのですが、いま中小企業庁が中心となり、BCPの作成、BCMへの取り組みに対する補助金制度を準備しています。こういった資金提供のような分かりやすいインセンティブがないとなかなか普及しません。


■BCMへの注目は高まっていますが、定着にはまだまだは時間がかかりそうですね?

小林:
事業への脅威は将来の出来事であり、必ず発生する訳ではないという意識が、特に日本人には根深くあると思います。
それとBCMにはあまりにもコストがかかる、あまりにも複雑なことをしなければいけないのでは、という先入観があるのかもしれません。
効果的なBCMというのは、復旧する事業の優先順位を明確にし、復旧対策費用と回復すべき損失の最適値を自社なりに見極め、社内外のステークホルダーとの充分な合意のもとにRTOを設定すれば、分かりやすく過大なコストを必要としないBCMが可能ではないかと考えます。

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BCMに対するゼネコンへの期待



■BCMに関してゼネコンに期待することはありますか?

小林:
大きくふたつあります。
ひとつは社会全体のBCM能力の向上への貢献。もうひとつは具体的な復旧手段の提供です。


■それぞれについて具体的にお話いただけますか?

小林:
個々の企業ではなく社会全体がBCMに適合できるようなインフラの計画や建設への提言をやっていただけないかということです。
例えば、アジアに市場を奪われているような港湾施設を防災性能も含めて増強させることによって、それをさらに地域再生の起爆剤として活用し、国全体の競争力を向上させることに結びつけるなど、大きなスケールでの取り組みです。

また、首都圏でいま大規模な地震が発生すると112兆円の損失が予測されています。この数字は予測手段を変えても大差ないと思います。その損失を出来るだけ軽減させるためどのような投資をすべきか?ということです。
社会全体のBCMができないと、顧客や投資が海外に流出し、日本経済の空洞化にもつながるのではないかと懸念しています。もちろん個々の企業への対応も大いに期待されているでしょうけれども。

■復旧手段の開発というのは?

小林:
実は、復旧やバックアップの技術は日本にはほとんど無いのです。現実の計画では復旧手段の洗い出しさえできていないのが現状です。
このため、事前のリスクはある程度算出できても、どの企業も現実的で有効な復旧対策が具体的にはまだほとんどできないのが現状です。
欧米には復旧をサポートするサービスや製品がたくさんあります。
国内では保険会社が復旧の分野に積極的に取り組んでいますがどうしても資金面だけのサポートに限られますです。ハード面の手段、実際の事業所や工場の復旧、通信回線やエネルギー供給の確保、インフラ復旧によるサプライチェーンの再生などのための手段が間違いなく必要です。
地震対策に関しては、ゼネコンは予防措置として免震など様々な手段を開発・提供してきましたが、例えば緊急時に民間企業が簡便に使用できるレーザー通信システムなどの復旧手段・技術を開発・提供できないでしょうか?
また、バックアップオフィスを建設し、復旧時に提供するようなサービスにもニーズがあるでしょう。
施設、インフラなどのハードを実際つくっているゼネコンだからこそ出来ることではないでしょうか。ビジネスとしてのポテンシャルも高いと思います。


■BCM、特に復旧に役立つ具体的な手段の提供、そして国土や地域全体を見据えた取り組みがゼネコンのすべき事ということですね?

小林:
そう思います。私たちのコンサルティングが活きるのも、そのような現実的な方策があってのことです。期待していますよ。

■BCMの現状、基本、そして今後の展望に至るまで、長時間ありがとうございました。ご要望、ご期待に応えられるよう、積極的に取り組んでまいります。
本日は、お忙しい中、ありがとうございました
インターリスク総研

リスク洗い出しから対策前後のRTO比較、それらをもとにしたBCPの策定支援、そして効果の高い減災対策など、大成建設は着実なBCMとするための「はじめの一歩を」ご支援しております。

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