BCMへの取り組みがが企業信用力の源泉になっていく
■大成建設は今後どのようなBCM事業を展開されていきますか?
町井:
本来はBCMとはリスクの要因を特定しないものです。
特に減災という面でいまは地震中心の対応となっていますが、今後もファシリティを中心に対応するリスクの幅も広げ、RTO(業務再開目標時間)の短縮をはかることで、より確実な事業継続の実現に向けたソリューションがご提供できればと考えています。
例えば、いま、ある外資系の企業からの依頼で、入居しているビルへ爆弾を積んだトラックが突入してきても、完全に防御するための仕組みの導入を行っています。これはその企業の本社の意向で、いわゆるテロ対策ということですね。
防犯に関しては、犯罪の技術がますます多様化し、高度化しています。施設内のゾーン毎の重要度とセキュリティレベルの計画をあわせもち、なおかつ最適な仕事ができる環境を設計していく必要があります。
■情報漏洩やIT事故についてはいかがでしょう?
町井:
個人情報など企業情報の漏洩は内部犯行が多いと言われており、施設への人とデータの入退管理はポイントとなっています。
弊社では国際標準となっている情報管理規格であるBS7799や国内規格であるISMSを、国内の建設業で始めて取得しています。こうして培っているノウハウや、いま話したセキュリティレベルの計画・設計を通じて、建物によるフィジカル、ネットワーク技術によるサイバー両面で施設のセキュリティ性能アップに対応していきます。
■IT事故防止は企業の内部統制(ガバナンス)を重要視する様々な枠組みからも求められています。
町井:
当社でも経営理念を背景とした企業行動憲章を設け、説明責任などCSRの展開、そして内部統制を確実なものにし経営体質の強化をはかっていますが、これはあらゆるお客様にとっても同様のことと思います。
2006年末に導入される新BIS規制では、
1)自己資本比率で見る信用リスク
2)相場変動リスクで見る市場リスク に加え
3)オペレーショナル・リスク
という評価基準が加わりました。
特に3)はIT(情報技術)化の進展などによるコンピューター障害や職員の事務的ミスなどで損失が生じるリスク、つまり業務の内部統制の状況までを透明化しようとしています。
スタッフ、サプライチェーンとともに重要な事業構成要素であるファシリティ
■企業の信用力がその危機管理能力で評価される時代なのですね?
町井:
まったくその通りだと思います。
米国で相次いで発生した企業会計不正に対応するため、監査人の独立性、会社の責任、財務ディスクロージャーの強化、ホワイトカラー犯罪に対する罰則強化等を規定した、2002年7月末に成立のSOX法(Sarbanes-Oxley Act企業改革法)は、米国で事業展開をする日本企業も遵守しなければいけない法律です。
これも内部統制と徹底とその透明化を求めています。新BIS規定ともども、トータルなセキュリティ対策が求められています。
■BCMへの要求は高まる一方ということですね?
町井:
こうした状況への対策として、ファシリティが出来ることはまだまだたくさんあると思いますし、その答えが問われていると感じています。
実は建設・不動産分野では施設を通じた事業継続性確保という発想は以前からあります。
例えば、地震リスクに対する不動産の資産価値を表す指標として使われるPML (Probable Maximum Loss:予想最大損失率)。これは「地震による物的損失額の再調達費に対する割合」を表しており、一般的に国内ではPMLが15%を切る耐震対策をした建物は地震保険をによる担保が不要となります。施設の耐震性能が地震に対する被害を担保するようになるからです。
その数値の実現には免震の導入が最も合理的で、機能維持性能の高さからテナントも集まりやすくなり収益性向上に結びつきます。つまり施設の耐震性能アップが直接経済的評価にもつながっていく訳です。
今後は、こうしたことが企業自体の評価にもつながっていくことでしょう。

証券化プロジェクトによるビジネスモデルの例
免震化によりPMLを15%以下としたことでwin-winのビジネスモデルを実現した
あらためてお客様の要望を基点に
■BCMが直接的・間接的にますます企業経営にとって重要になってきます。
町井:
経営に不可欠な要素といったところでしょうか。
しかし一方で、BCM自体が複雑化していく、多様なリスクを対象に、多様な目的で事業継続性が問われるという状況になっています。今後は、コンサルティング会社などとのアライアンスも検討し、お客様の明確な業務分析、リスクや被害額などのビジネスインパクト分析を踏まえることが前提になっていくと思います。
そして減災対策はもちろん、RTO(Recovery Time Objective復旧目標時間)を厳守できる復旧対応、他業種とも連携したバックアップ施設、代替施設の提案も視野にいれたサービスに発展させてようと考えています。
■お客様の実状把握が重要ということですね?
町井:
リスクが把握しにくく、被害額の算定が難しいのは、まず業務分析が充分できていない、またそれ以前に業務の切り分けが出来ていないからです。ここはコンサルティング会社のノウハウも必要です。
また、当社には、ファシリティマネジメントという、施設を経営資源として計画・運用するための手法とノウハウがあります。そのひとつとして「T-PALET」と名づけた、経営層、社員すべての施設利用者ニーズ・現状の問題点などをヒアリングを通じて的確に把握し・整理し、計画・設計に反映する技術があります。
BCMはお客様の全員にご理解いただけないと実際の効果が得にくいものとなりますが、このヒアリングのプロセス自体がコンセンサスを形づくることにもつながります。
弊社では今後もお客様の視点にたった、BCP立案から減災対策、実際の復旧対応まで、幅広くBCMに取り組んで行きます。