[issued:2005.09.01]
BCMにおける地震リスクを考える
BCM(Business Continuity Management)
企業の存続を目的として、事業を死守するためのマネジメント手法であるBCM。
地震リスクの側面から考えてみましょう。

大成建設(株)
営業推進本部耐震推進部
部長
杉崎良一
BCM導入の必要性
日本におけるビジネス環境はグローバル化や情報化の進展に伴い、リスク発生時に企業がダメージを受けた場合の影響範囲も大きく拡大しています。現在、多くの企業で地震をはじめとする様々な「防災」への取り組みが行われていますが、特に「BCM
*注1(事業継続管理)」に対する関心が高まっています。
企業は業務として「製品やサービスを契約通りに提供する」ことで利益を得ており、そこには同時に社会的な責任(CSR)
*注2が生じます。そのため、企業はリスクがなんであれ、その発生時に対する備えとして、事業の継続や早期の再開をはかる必要があり、対策を施しておくことは企業の信用・信頼性を高めます。逆に、こうした備えを保有/実践できていない企業は、リスクが発生した場合、機能停止の可能性が高いことになり、市場からの信頼を失う危険性を抱えることになります。
注1【BCM(Business Continuity Management)】
事業を継続させる手段を実践させるための管理手法。
注2【CSR(Corporate Social Responsibility)】
利潤追求だけではなく、法律の遵守、社会的倫理を尊重しつつ、安全かつ良質な財・サービスの提供を行うという企業の社会的責任。
BCMを考える上でのポイントとBCPの策定
BCMとは、「企業経営者が、それぞれの事業形態や特性をふまえ、企業の存続を目的として、事業を死守するマネジメント手法」であり、「事業停止の阻止」または「早期再開」などを目標に、あらゆる観点からの対策を講じていくための「経営戦略」としての取り組みであるといえます。
BCMでも通常のマネジメント手法と同様PDCAサイクルを実施しますが、それぞれの段階で、いくつかの重要なポイントがあります。特に初期段階における「リスクの発見」はその後の施策の大前提となる重要なステップとなります。
なぜなら、様々な現象を自社の事業を構成する要素やプロセスと照らして、「その現象が自社にとってリスクとなり得るのか?」を検証することで、事業のボトルネックを発見することができ、継続/再開のためのプラン(BCP)
*注3を作成する上での基本となるからです。
注3【BCP(Business Continuity Planning )】
事業継続のために定めた具体的な計画(書)
BCPにおける地震対策をどうとらえるか?
BCPはリスクごとに構築するのではなく、最も重要な事業に対する最も大きなリスクを対象に、確実に対策を実現することで比較的容易に他のリスクにも応用できます。
企業の機能を停止させる恐れのあるリスクには地震や台風などの「自然災害リスク」や事故、テロ、疫病など様々ですが、中でも地震によるリスクは日本の地域特性から発生頻度、規模など諸外国に比べ格段に高いことはいうまでもありません。
地震災害などでは顧客や取引先、管轄行政といった企業を取り巻く様々なステークホルダー(利害関係者)も同時に被災者となるという特性があり、事業継続のためにはそれらのステークホルダーと協調していく必要もあるなど検討すべき範囲も広い反面、他のリスクへ応用または転用できる要素も多く含んでいます。
日本の企業においては,まずは自然災害(特に地震)を主なリスク対象とし、できることから取り組んでいくことが重要かつ効率的と言えるのではないでしょうか?
「BCPを考える上でのリスク課題」
先日のフォーラムでのアンケート結果も「地震」がリスク対象のトップに。
「BCMの策定やBCMへの取り組みについて」
BCP策定への取り組みには多くが積極的。既に取り組んでいる企業も。
地震リスクの影響と基本的な対策指針
地震によるビジネスへの影響は、「ファシリティ」「スタッフ」およびキャッシュフローを含む「サプライチェーン」といったビジネスの主要な構成要素全体におよびます。事業継続を考える場合、それぞれの業務でこれらの要素がどのようなダメージを受け、それがそれぞれ前後の業務へ、どの程度影響するのかを洗い出していくのが最初のステップであり、最も重要な作業となります。
また各業務の重要度の指標としては復旧の緊急度を「何があっても中断してはいけない業務(MCA:基幹業務)
*注4」といったレベルから「12時間以内」「24時間以内」「1週間以内」などそれぞれ具体的に目標回復時間(RTO)
*注5として定めておくことも重要なポイントです。これらの作業により、現実のビジネスにおける脆弱性が把握でき、事前対策の不十分な点や事後対応計画が現状をふまえていなかったことなどが明らかになってきます。
耐震化投資は経済的効果が見えにくいとよくいわれますが、BCMの一環として取り組み、企業を取り巻くステークホルダーへの影響を考えればROI (費用対効果)
*注6が見えてくるのではないでしょうか。
注4【MCA(Mission Critical Activities)
企業活動において24時間365日、止まらないことを要求される基幹業務。
注5【RTO(Recovery Time Objective)】
災害、事故等により業務中断の後、ビジネスを再開できるまでの経過時間およびその指標。
注6【ROI (Return On Investment)】
事業に対して投下した資本から生まれる利益の比率。
ROI (投下資本利益率)=(経常利益+支払利息)÷(借入金+社債発行額+株主資本)
「阪神大震災における竣工年代別被災状況」
ファシリティの状況を把握するには耐震診断が必要。一般的には、1981年以前の建物は耐震性が不足していると考えられます。(建設省建築研究所データによる)