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[issued:2008.06.19]

耐震補強プロジェクトの勘所

∼最適な耐震補強計画を実現するための基礎知識∼

耐震補強を行うには決して少なくない資金と期間を必要とします。様々な観点から評価される今日の建物とその管理において、「最適な」補強計画を立案、実現するためのポイントを紹介します。

菱沼慎夫ポートレイト大成建設(株)
営業推進本部耐震推進部
次長
菱沼慎夫

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こんな方へおすすめのコンテンツです
・補強プロジェクトを任されたが、行き詰まっている担当者の方
・できる限り効率のよい補強プロジェクトを思案中の方
・耐震補強を期に安全性だけでなく、建物の総合的なバリューアップを図りたい方

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法規制から学ぶ耐震補強の意義

建築基準法の変遷と耐震診断や耐震補強の要否の関係


 現在の建築基準法における耐震基準は1978年の宮城県沖地震の被害分析に基づいて1981年に改正され、これ以前のものを旧耐震、以降を新耐震といいます。旧耐震の建物は、現行の耐震基準には適合しませんが、建てられた当時の基準には適合しているため【建築基準法第3条】により、「既存不適格建築物」という形で現行法自体の適用は免除されていました。
阪神・淡路大震災の建物被害の年代別分析

阪神・淡路大震災の建物被害の年代別分析
(当社調べ)


 しかし、1995年の阪神・淡路大震災で旧耐震の建物に【崩壊】【倒壊】などの大きな被害が集中した事から、現行基準の最低限のレベルまで補強する必要性が認識されました。同年12月施行の【耐震改修促進法】では、【多数のもの】が利用する特定建築物の所有者に耐震診断と必要に応じた耐震補強を行う【努力義務】が課せられるようになりました。

 この耐震改修促進法も2006年に改正。2016年までに耐震化率90%という数値目標を掲げ、特定行政庁に対する具体的な計画の策定義務や【緊急輸送道路の沿道建物(高さ規定あり)】など、特定建築物の範囲の拡大が行われています。

 その他、建築基準法で義務づけられている「特殊建築物等定期調査報告制度」では耐震診断や耐震補強の状況を記載する事になっており、宅建法でも重要事項説明に耐震診断の実施状況やその結果について説明する事が規定されるなど、耐震性に関連した重要な施策や規制が多く定められるようになってきています。
耐震診断と耐震補強を考える

建物の地震に対する強さを判定する耐震診断。
このコーナーでは、建物の耐震性とは何か?について解説するとともに、最適な耐震補強プロジェクトのための基礎知識としての「耐震診断」と「耐震補強」について解説します。

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認定等各種制度の利用

 先に述べたように耐震基準は実際の地震による被害分析に基づいて常に進歩してきました。安全性の面からも、また資産価値の面からも、所有建物の耐震性を確認していく事は非常に大切なことといえます。

 また、耐震改修促進法では、努力義務を課している一方で改修計画に対する【認定】制度を設け、耐震化を進めるインセンティブを強化しています。

 認定を受けることで、建築確認を必要とする大規模改修工事については計画の認定をもって建築確認があったものとみなされます。そのため建築基準法の手続が簡素化されるなど、建築基準法の規定の緩和・特例措置が適用されます。
耐震診断・耐震改修マーク

耐震診断・耐震改修マーク表示制度
耐震診断の結果が合格であったり、認定を受けた耐震改修を行い、検査に合格した場合、申請により交付されます。


 さらに、認定によって2008年2月施行の「耐震診断/耐震改修マーク表示制度」や国による「住宅・建築物耐震改修等事業」をはじめとした助成制度を受けることができます。

 耐震補強は認定を受けない、いわゆる自主改修の形で行う事も可能です。しかし、認定を受けることで広がるリニューアル、コンバージョンの可能性や「改修済み認証」による表示制度は、建物の総合的な価値、性能を高めることにも繋がってきます。

 施設評価の際にPMLが求められたり、企業活動においては、事業継続性からの評価も求められるなど、もはや耐震性は安全面のみではなく、CSR、BCM、資産価値、競争力といった様々な視点で考える時代となっています。戦略的な施設運営の上でもこうした制度を活用していくことがますます重要になってくるのではないでしょうか。
スタートした耐震改修促進計画

「待ったなし」で進む行政の地震対策への取り組み。その傾向と対応について概観するとともに、何が必要か、どうすべきかについて考えていきます。

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プロジェクトの段階と検討課目

 工事の内容にもよりますが、タイムラグ無しで進んでも半年以上かかり、【認定】を受ける場合は、その審査期間なども必要になるためおよそ1年程度のプロジェクトです。スムースにプロジェクトを遂行するには各段階前後で各種の協議や検討などが必要になります。以下、それぞれの段階での検討ポイントを解説します。
認定取得をする場合のタイムテーブル

認定取得をする場合のタイムテーブル(例)
実際には診断開始までの事前打ち合わせや設計段階に入るまでの協議、検討なども必要。


建物の規模や構造等によって診断方法を選びます。

建物の構造形式や規模によって診断の方法を選びます


耐震診断
・診断に必要な「構造図」「意匠図」「構造計算書」の有無を確認します。竣工時に発行される確認済み証や増改築や改修を行った建物では、それを反映した図面が重要です。
・取り急ぎ耐震性の状況だけを把握したいだけなら、低層建物の場合は1次診断で済ませることもできますが、補強設計を行うには建物に応じた診断が必要です。
・【認定】を前提とする場合は、必要な要件に合わせた現地調査のサンプル数と非構造部材や設備機器、配管など構造体以外の診断も必要です。診断段階から認定を受けるかどうかを決めておくとよいでしょう。

補強設計
・まず、耐震補強の意味を良く理解して
 「何のために補強するのか?」
 「その建物は後どのくらい使用する予定なのか?」
などについて短期的な視点と長期的な視点の両面から、補強の目標レベルを決める事がすべての基本となります。免震や制震などはそれらを実現するための手法であり、施行条件などと合わせて決めていくことになります。
あきらめない地震対策

建物を使いながら耐震補強を行うには、どのように計画を進めていけばいいのでしょう?
「設計から施工まで一貫して行う総合建設業ならでは」のメリットを最大限に活用していただき、日常的な業務、活動を維持しながら、或は補強後も維持出来る耐震補強を計画・実施するためのポイントを解説します。

耐震診断結果の読み方と補強目標の検討

耐震診断結果によって得られる耐震指標Is値。
一般的には補強計画においては、この指標が0.6を上回ることが目標となりますが、それはどのような耐震性能を意味するのでしょうか?必要な耐震性能を確保するためには、どのような点に注意して計画を進めればよいのでしょうか?


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要求用件で考える耐震補強プロジェクト

 前述の様に耐震補強計画は、設計段階で施工を視野に入れることで結果的に満足度の高いものになります。現在は【使いながら】の耐震補強を基本として話を進めるケースが多いのですが、工期や費用との兼ね合いを図りながら、「本当に【使いながら】がベストであるか?」も含め、プロジェクト全体の要求用件を整理しておく事が良い計画に繋がります。

以下に多く見られる要件をケーススタディとして挙げてみます。

リフレッシュと同時に行いたい
中長期的な視点でイメージアップやその他の性能向上リニューアルを兼ねた計画とする事で資産価値や生産性向上に繋がります。
使いながらの補強と外装リフレッシュを兼ねた外部補強により、室内の有効面積もほぼ現状を確保する事が可能です。これには外壁全体を補強壁としてリフレッシュする方法や補強部材をデザインする方法などがあります。
工事中の騒音や震動を避けたい
建物を「使いながら」の工事の大きな障害となる騒音や震動は施工中の様々な段階で生じますが、その最大要因の一つである【アンカー打設】を省略した工法が開発されています。工程の省略による工期短縮とあわせて、「使いながら」の可能性を高めます。
事業継続を踏まえた対策にしたい
建物によっては補強部材にオイルダンパーなどの制震装置を適用する事で、補強箇所数を低減したり、地震時の建物の揺れの強さを押さえることができる場合があります。効果の度合いは、建物の構造的な性質によっても変わってきますので、綿密な診断によって正確に建物の性質を分析することが不可欠です。
 
免震による補強は、建物に免震装置を設置し、地震の揺れそのものを伝わりにくくします。正確には補強ではないので【免震補強】ではなく、【免震レトロフィット】といういい方をします。
施工場所を集中することができるので、その他の階はそのまま使用を続ける事が可能です。また、地震の影響そのものが低減されるので、建物全体の機能を守る事が可能です。
元の建物の性能はもちろん、周辺の状況を含めた施工条件を確認すると共に、一時的に基礎や柱を切断するので、施工期間中の耐震性能の保持を含めた計画を検討する事が重要です。
 
 このように、耐震補強を計画する際には様々な要求事項が出てきますが、解決する方法は一つだけではありませんし、複数の事項を組み合わせた方が解決の近道になる場合もあります。逆にすべての要件を満たそうとすると、費用や工事期間が増大してしまう事にもなります。

 こうした混乱を避けるためには「なぜ、耐震補強を行うのか」という基本的な補強の目的に立ち返り、実施にあたって必要な事を箇条書きで良いので書き出してみると、何が一番大切なのかという優先度(プライオリティ)を付けることができ、プロジェクトのスコープ(幅、深さ、ねらい)をまとめやすくなります。

 ITの世界では、あいまいな発注による現場の混乱やスケジュールの遅延を防いで適切なシステム開発を依頼するため、要求事項や条件をまとめたRFP(Request for Proposal:提案依頼書)の重要度が増大しています。建物の価値が複層化、複雑化してきている現在、こうした手法を利用するのも考慮に値するでしょう。安全性を確保した上で、今後の経営や運用に何が必要なのかをしっかりと見据えることこそが、最適な耐震補強プロジェクトの勘所に他ならないのですから。

明治屋様の企業姿勢を具現化する中間階免震レトロフィット

コンプライアンス重視とお客様本位をミッションとして取り組んだ「使いながらの耐震補強」。 銀座の一等地で実現された「中間階免震レトロフィット」の現場に迫ります。

ヒト・建物・空間に「やさしい」耐震補強

耐震改修を取り巻く環境が整備され、耐震化への取り組みが進む一方で、補強に踏み切れない建物が少なからず見受けられます。その原因と解決策を解説するとともに、ベストな耐震補強には何が必要かを考えていきます。


ユーザー本位の耐震補強を目指して

耐震補強の進化には、単にお客様から提示された課題に応えるだけでなく、ファシリティにかかわる様々なステークスホルダーの立場から、それぞれが抱える重要な問題点を明らかにしていく必要があります。
今回の特集では、お客様にとっての最適解を追求している大成建設の「耐震補強ソリューション」の多様な側面、担当者の意識・実感、そして実際の取り組みについてお届けしたいと思います。

技術力、現場力、そして人間力で実現する「使いながら」

いまや一般化しつつある「使いながらの耐震補強」。
建物を事業活動の場として使いながら耐震補強は、建物の診断力、補強の設計力に加え、確かな「現場力」によって実現します。


補強計画診断

ローコストかつスピーディに耐震性能評価を行い、耐震化プロジェクトにおける建物オーナーの方の素早い意志決定を支援します。

RC造の耐震補強

耐震補強とは不足している耐震要素を補完するということ。大成建設は「やさしい」をキーコンセプトに、費用対効果の高い耐震補強をご提供します。


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