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[issued:2006.06.22]

免震が創る「売れる」マンション

商品力アップのソリューション

「売れる」マンションづくりはデベロッパーの方々にとっては永遠かつ常なる課題。競争が激化するマンション市場において、いかにして差別化し、クオリティの高い商品を提供できるかが問われています。
免震をデベロッピングのコアに位置づけ、そのメリットを最大限に活用することで、これまで困難、あるいは実現できなかった商品開発の可能性が見えてきます。

茅野貢ポートレイト大成建設(株)
マンション本部マンション推進部
部長
茅野貢

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「免震マンション」の商品性


国土交通省政策研究所の報告書による
(PRI Review 第19号)


 いうまでもなく、日本は地震大国であり、未だ記憶に新しい新潟県中越地震、福岡県西方沖地震の被害は人々に大きなインパクトを与え、防災への取り組み、安全性へのニーズは非常に高いといえます。こうした背景の中、マンション市場においては「耐震性」が一つの重要な商品力を構成するようになってきました。

 「耐震構造」は柱や壁の強さや粘り強さを高めることで、地震による強く激しい揺れに耐えようとするもので、マンションの耐震性能を示す住宅性能表示制度ではそのレベルを耐震等級で表しています。ユーザーはマンション選定の際の指標としてこれを重視しており、販売時においても「耐震性の高さ」を標榜するプロモーションが目につきます。

 「耐震性が高ければ”免震”までは求めない」というユーザーがまだ多い一方で、耐震性能を1.5倍の地震を想定する「等級3」とするためには、柱をより太くしたり壁を厚くしたりする必要があります。しかし、そのため居住面積や空間構成の企画に影響を及ぼす場合が多く、また、建物重量も増大するので基礎や地盤の状況によっては杭等にも影響がでる場合があり、コストにも影響してきます。

 これに対し、「免震」では、地震による強い揺れそのものをゆっくりとした穏やかな揺れに変えるため、構造体の割り増し等は必要ありません。建物は静かに揺れるため、建物自身はもちろん建物内部の被害やそれに伴う人的被害をくい止めることができます。「免震」はいわば現時点で最高の地震対策であり、安全性というニーズに不満なく応えることが可能です。

 人々の間に免震に対する知識、理解が深まるにつれ、「免震マンション」の商品価値も高まり、それを開発・供給する企業に対しては「安心して暮らせる企業」というブランドイメージや信用度が高まるという効果も期待できるのではないでしょうか。

免震マンションの着工棟数
(新聞記事等による集計で、実際の棟数とは異なります。大成建設調べ)

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「免震マンション」企画における課題とソリューション

 こうした免震構造の耐震性能の高さや、ユーザーの地震対策への関心の高さを背景とした市場ニーズの状況に対し、免震マンションの供給状況は決して多いといえないのも現状です。
 これは「免震」に対するユーザーニーズの強さに対して、「免震マンション」を構築する際に存在するいくつかの課題とのバランスがとれていないため、「免震」を前提とした企画を立案しにくいためではないでしょうか?

 しかし、大規模地震発生の切迫性増大を背景とした様々な法規制の改正や、免震の普及による評価手続き等の迅速化、装置のコストダウン、そして新技術の開発等により、下記に挙げた様に「免震マンション」における様々なハードルは、近年、低くなってきているといえます。

■免震の設計や認定取得による期間増の課題
免震建物の場合、通常の建物とは異なり免震に対する建築センターの評定とそれに基づく大臣認定を取得しなければならず、そのための期間が必要です。特に評定期間は初期の頃は2、3ヶ月程度でしたが、近年は評価手法も標準化され1ヶ月程度まで短縮されてきました。
現在では、一般的な設計期間に対して、およそ3ヶ月程度の期間増で認定の取得までが可能となっており、プロジェクトへの影響も最小限で済みます。


杭頭免震によるコストダウン
免震基礎の省略により、従来の免震機構のコストに比べ18%のコストダウンを実現しました。
(*当社比、良地盤での試算による)


■工程やコストの課題
免震装置自体の価格は、生産数も多くなり当初と比較して大幅に引き下げられてきたとはいえ、一般的に建物を免震にしようとすると、免震基礎の設置やそのための掘削の増加等、免震要素の「追加」という様な形でコスト増につながってしまいがちです。それに対し、免震採用による地震影響の低減で、建物の構造体を削減し、コスト低減をはかることが可能ですが、建物規模が小さい場合は大きな効果は期待できません。
しかし、中間階免震や新開発の杭頭免震などにより、免震にかかわるコストそのものを引き下げることが可能になっています。


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免震が広げるマンション計画の可能性

 「免震」=「積層ゴム」という認識が一般的ですが、実際には様々な免震装置がありますし、設計によってはその特性や性能も様々です。今回の「住宅性能表示基準」改訂案では、従来の「耐震等級」の対象から「免震」を独立させ、「免震」であることの明記と「固有周期」や免震性能そのものを表示する規定が提示されています。

 より高い性能を持つ免震を採用することで、これまでマンション計画には不向きだった土地の活用も可能になるなど、マンションの企画自体により大きな幅を持たせることも可能になってきます。



様々な免震装置

1F柱頭部分での中間階免震

中間階免震
右:地下の柱頭部分に免震装置を設置する「地下中間階免震」
左:1Fの柱頭部分に免震装置を設置する「地上中間階免震」


●狭小地の活用
中間階免震は一般的な免震の様に基礎部分を免震層とするのではなく、地上階の柱頭部分に免震装置を入れるタイプの免震で、周辺ピット等を設置する必要がありません。このため、立地的には好条件ではありながら、矮小敷地で周辺にゆとりが取りにくい場合や平面的に広い地下階や高層部が存在する場合でも免震マンションの計画が可能です。
●不整形地を逆手に魅力的なマンション計画







ドミトリー八事
三角の土地に3つの形状の建物を組み合わせた複雑な構成計画。
免震により一体化することで逆に土地の形状を活かした魅力ある空間を創りだしています。


不整形な土地や傾斜地の場合、建ぺい率を最大に利用しようとすると建物は複雑な形状となったり複数等を接合する必要等がでてくるため、構造的にもモジュールを区分する必要がある等複雑化し、コストアップの要因にもなっていました。しかし、免震は建物に伝わる地震に影響そのものを緩和するため、複雑な平面形状の計画や複数モジュールの構造も一体的に設計ができ、より土地の形状を活かした個性ある企画を可能とします。

軟弱地盤での免震性能
「揺れの強さ」を十分に小さくするためには柔らかい地盤では硬質地盤に比べ、より固有周期を長くできる免震が必要になります。


●軟弱地盤でも免震を可能に
軟弱地盤は地盤自体の固有周期が長い上に大地震時にはさらに長周期化します。そのため、一般的な免震では逆効果になる場合もあり、適用がしにくい面がありました。大成建設の高性能免震ハイブリッドTASS構法は、4∼5秒の優れた超長周期化を実現しており、軟弱地盤においても十分な免震効果を発揮することが可能です。
●超高層マンションにも「免震」を実現
通常の免震による長周期化はおよそ2∼3秒程度であるため、もともと固有周期の長い高層マンションでは効果が薄いとされてきました。これに対して4∼5秒という超長周期性能を持つハイブリッドTASS構法は、既に高さ135m地上41階の超高層マンションを始め、多くの超高層免震に適用されています。


新川崎都市型住宅
(サウザンドタワー)



ライオンズタワー仙台広瀬


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「免震マンション」が持つ本当の商品力

 投資対象としてのマンション、老後を安全に暮らすためのマンション、都市で働く利便性を追求したマンションなどニーズが多様化する中で、いかにして付加価値を高め、収益性の高い商品が開発できるかが、生き残るカギといえます。
 セーフティ(耐震性)&セキュリティ(防犯性)は、これからのマンションを考える上で必要な、基本となるキーワードであると言えるでしょう。

 免震がもたらす高い耐震性能は、そのままでも十分ニーズに訴求するものですが、免震本来がもつ「建物への地震影響の緩和」という特性は、例えば、フラットスラブなどのによる無柱・無梁空間の導入も容易にします。免震がもたらす構造的な自由度は、住戸割や間取りの柔軟性を高めるばかりか、エレベータコアの配置計画やそれに伴う構造壁の配置等もより柔軟にするなど共用部のデザイン計画にも大きな自由度をもたらします。
 また、従来は利用の難しかった不定形地や狭小地での有効な土地においてもこれらのメリットを活かしつつ、それを逆手にとって既存商品にないユニークなデザインを持つ魅力的なマンションを実現することも、そう難しい話ではありません。

 免震建物は目標とする性能に合わせて設計・施工を行うわけですが、安全・安心の延長線上にあるこうした「免震のメリット」を十二分に活用するためには、総合的な見地で企画段階からの検討が必要不可欠です。免震をプラスαの機能としてしかとらえないという見方では、実は自ずと制約や限界があり、コスト低減にもつながりにくくなります。

 厳しいニーズや諸条件に対するソリューションとして免震をとらえ、その特性をうまく活用することで、これまでにないマンションデベロッピングの可能性が見えてくるといえるでしょう。


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