[issued:2006.09.20]
ハイブリッドTASS構法の免震効果
-震度6強を経験した免震建物-
画期的な長周期化を実現し、高い免震効果を誇るハイブリッドTASS構法。
今回はその効果を実際の地震で計測されたデータを基にご紹介します。

大成建設(株)
設計本部
グループリーダー
勝田庄二
こんな方へおすすめのコンテンツです
・事業継続性の確保についてご検討中の方
・本社建物や主要拠点となる様な施設をご検討の方
・耐震補強を考えているが、一般的な補強では不足するのではないかとお考えの方
「すべり」使った複合免震で高い効果を実現
大成建設の
ハイブリッドTASS構法はすべりを併用した複合免震構法です。免震の命といえる建物の長周期化に優れており、強い地震の揺れに対して低減効果の高い免震構法です。
ハイブリッドTASS構法はこれまでに50件を越える採用実績(2006年7月現在)を重ねてまいりました。中には近年発生した地震を経験した建物があり、いずれも期待通りの免震効果を発揮してきたことが確認されています。
特に2004年の新潟県中越地震においては、国内の免震建物としては
はじめて震度6強、最大加速度808ガルという、1995年の阪神・淡路大震災の揺れにも匹敵する地震の洗礼を受けましたが、高い免震効果を発揮し被害を最小限におさえるとともに、頻発する強い余震の中で、地域の安全確保や復旧活動にも大きく貢献したということです。
そこで、今回のTaisei's Eyeではこの新潟県中越地震での例をはじめ、ハイブリッドTASS構法が実際の地震において発揮した免震効果について、実績の中からピックアップした総集編としてご紹介いたします。
震度6強の地震で揺れの強さを1/4に低減
-小千谷綜合病院老人保健施設「水仙の家」-
新潟県小千谷市にある小千谷綜合病院老人保健施設「水仙の家」は鉄筋コンクリート造5階、延べ面積4,452平方メートルの免震建物で、ハイブリッドTASS構法を用いています。
2004年10月23日にマグニチュード6.8の新潟県中越地震が発生し、震源地に近い小千谷市は震度6強の揺れにみまわれました。「水仙の家」も地表面で
808ガルの非常に大きな揺れを記録しました。しかし免震建物である「水仙の家」では、建物内の揺れは1階部分で
205ガルと地表の揺れの強さに比べ1/4程度の揺れに留まりました。
震度6強を記録するという強い地震において、免震の効果が検証されたのは初めてのことです。
加速度記録(黄色:地面の揺れ 青:1階(免震)の揺れ)
すべり支承の移動痕跡
ハイブリッドTASS構法は、弾性すべり支承が滑ることによって地震の揺れのエネルギーを摩擦熱に変換し大きな低減効果を産みだします。
後日、その変位痕跡を測定すると、最大でおよそ14センチの移動があったことが確認できました。これは、建物全体が地面に対して相対的に14センチ移動したということを意味します。
免震建物は強い地震の揺れに対して、大きくゆっくりと揺れることで建物内部への影響を抑えます。
地震後の建物内は家具類や食器棚の食器に至るまで散乱することなく元のままで、ほぼ無被害と呼べる状態でした。また、本震後も大きな余震が続く中、免震建物である「水仙の家」は安心できる施設として隣接の病院からも入院患者の方の避難場所として活用されました。
「水仙の家」における免震効果
小千谷総合病院
病院長
横森忠紘様
インタビュー・免震効果の実感
(インタビュービデオ「免震構造技術の実証」より抜粋)
水仙の家に免震構造を採用したのは、ちょうど阪神淡路大地震の直後であったことから、免震構造の建物があれば大地震が来ても、患者さんを引き受けることができるだろうと考えたからです。
地震直後に隣の病院棟(昭和40年代の建物で非免震)に入りましたが、中は本箱がすべて倒れ、棚から落ちたものが散乱し、壁さえも落ちるなど惨憺たるありさまでした。特に驚いたのが、連結して簡単には倒れないようにしてあるはずのスチール製のカルテ棚もアメのように曲がっていたことです。
一方、免震構造の水仙の家では、本箱においた花瓶さえそのままの状態で、ほとんど地震の影響は見られませんでしたし、地震直後から400名ほどの方々が避難していました。地震時の様子を聞くと「船に乗って大きな波に揺られている」ような非常に緩やかな揺れで、病院で経験したような激しい揺れではなかったということでした。
思い切って決心し、免震を採用した。これが今回、患者さんの安全と病院の経営を守ること大きな効果があったと思います。これからの建物、特に病院や医療施設は免震構造でつくられるべきだと思いますね。 |
新潟県中越地震の被害と教訓を基に、震災から生活、事業を守るためにはどうするべきかを考えます。
超高層ビルでの免震効果
-日本初の高層免震ビル-「仙台MTビル」
仙台MTビルは仙台駅近くに位置する地上18階、高さ75mの超高層の事務所建築です。超高層建物に免震を適用した日本初のビルです。
一般的に、地震の加速度は建物内では増幅され地表面の加速度よりも大きな値になります。
また、 超高層免震の場合、強い台風等による風揺れへの対応のため、弱い地震での低減効果は、低層の免震建物に比べ低くなっていますが、揺れが強くなるほど高い効果が発揮できる様に設計されています。
免震建物の相対的な変位量を示す「けがき痕」
2003年5月26日の宮城県沖地震で震度5強の揺れに見舞われました。
このとき地表面では
139ガルの加速度を記録しましたが、建物内は
116ガル∼122ガルの範囲に低減され
最大20%の低減効果が確認されました。また地震時の建物変位を示すけがき痕跡では、最大14mm程度の変位が生じたことが確認されました。
これらの測定結果を実測値として、設計時に想定した様々な地震を対象にしたシミュレーションにフィードバックさせ確認したところ、やはり設計通りの大きな低減効果が期待できることも確認されました。
実際の測定データ
測定データをもとに、各種の想定地震にフィードバックしたシミュレーション結果
初めての高層免震
免震レトロフィットでの効果検証
-湯河原研修センター-
この建物は神奈川県湯河原町に位置する鉄筋コンクリートの建物です。昭和39年に建設された、旧耐震基準による建物であったため耐震性が不足しており、免震による補強(免震レトロフィット)が行われました。
低層棟(東館:地上7階)では既存基礎の下に免震装置を設ける基礎免震を施しました。これは、国内で最初の免震レトロフィット施工(完了ベース)となります。また傾斜地に建つ高層棟(本館:地上16階、塔屋2階)では8階柱部分に免震装置を設けた世界初の中間階免震が採用されています。
1998年4月26日のマグチュード4.8の伊豆半島東方沖地震にいて、免震効果が観測され、東館では地表面で
12.8ガルの揺れが1階床で
4.4ガルと
約1/3に低減されています。また、中間階免震を施した本館では、免震層の下の部分である8階の床では下層階が通常の耐震構造であるため、地表面に比べ揺れが若干増幅され
26.1ガルとなっていますが、免震化された9階では
14.5ガルとおよそ
1/2に低減されています。
中央の本館では8階部分で、左側の本館では基礎部分での免震レトロフィットが行われました。
中間階での免震レトロフィットは世界初の事例となります。
本館での免震効果
本館での免震効果
(9階より上の部分が免震化されています)
日本で始めての基礎免震レトロフィットと世界初の中間階免震レトロフィットが行われました
免震レトロフィットは単に耐震性能を確保するだけでなく、経営戦略、BCPなどに大きなメリットをもたらす可能性を秘めています。
強い揺れから弱い揺れまでをカバーするハイブリッドTASS構法
ここまでご覧いただいた様に、免震は揺れが強いほど効果(低減率)が大きくなります。
ハイブリッドTASS構法はすべりを併用することで、より大きな免震効果を発揮する仕組みになっており、強い地震はもとより、比較的発生頻度の高い弱い地震であっても高い免震効果を発揮することができます。
大成建設ではこのハイブリッドTASS構法を軸に、最新技術の導入やノウハウの組み合わせを積極的に行っています。
最新技術の導入例としては、センサーにより揺れの大きさに対応し、揺れの大きさや強さに応じた最適な免震効果を発揮する「セミアック免震」、半導体工場等で課題となる「微振動制御」も可能とした「MiC免震」等を開発、既に複数の採用実績もあります。
安全の上を行く安心と快適性を目指して、ハイブリッドTASS構法は、これからも様々なニーズに応え、進化を続けていきます。
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高い水準の微振動制御と免震による高い耐震性能を両立した、世界初の免震電子デバイス工場です。