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[issued:2006.11.15]

地震被害と天井の対策

近年、注目されている大規模空間における天井の落下、崩落の被害と対策について、行政指針を中心にその現状と概要をご紹介します。

高山正春ポートレイト大成建設(株)
設計本部 構造計画グループ
グループリーダー
高山正春

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こんな方へおすすめのコンテンツです
・集会場や宴会場等大規模な空間のあるホテル、祭典場の所有者、管理者の方
・劇場や講演会場等を運営されている方
・天井のある体育館や武道場、競技施設をお持ちの施設オーナー、施設管理者の方
・広い道場や教義場などをお持ちの宗教法人などの方 など

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地震と天井被害


最近の地震による天井の被害事例

 地震による天井の破損、脱落等による被害はこれまでにも報告されていましたが、直接人命に関わる危険性があまり高くないことなどから、建物の倒壊等の陰に隠れ、人々の間で話題となることは多くありませんでした。

 しかし、2001年の芸予地震をはじめとして、近年の地震により体育館や公共施設等の大規模な空間を持つ建物において天井が破損・崩壊する被害が相次いで報告、報道され、その安全性が人々の間で大きな関心事となって来ています。

 これらの地震による天井の被害からは、在来工法の天井やシステム天井等、天井の種類によって違いが見られますが、在来工法天井では、下地や天井ボード等天井全体が概ね一体化されているため、ひとたび天井落下が始まると連鎖的に天井全体に広がる可能性があることもわかりました。
 一方システム天井では各メーカーにより違いはありますが、グリッド状のシステム天井では局所的な力が加わったとされる所々の天井落下が見られ、ライン状のシステム天井では、天井材を載せたTバー間の距離が変化し、下地ごと天井材が落下する被害が見られています。
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被害防止への取り組み



地震被害と国土交通省による指針等


 

 こうした状況を受け、国土交通省では、これらの地震における天井被害について、それぞれの原因究明と落下防止指導(技術的助言)を行うとともに2005年に「公共建築工事標準仕様書」、「建築工事監理指針」を改訂しています。
 さらに同年8月には「大規模空間を持つ建築物の天井の崩落対策について」を各地方公共団体に通知し、特に安全性が求められる不特定多数の人々が利用する500平方メートル以上の大規模空間を持つ建築物の所有者、管理者に対して、その天井について実態調査を行い、その結果に基づき適切な崩落対策等の措置を講ずることを要請しています。


技術的助言の概要
(国土交通省:平成15年技術的助言より)

 国土交通省の技術的助言の主な内容は図の様になります。

・地震によって大規模天井に被害を与える要因として、天井が周囲の壁に剛に取り付けられていたり、接して取り付けられていた場合に、天井材の水平方向の慣性力によって天井材に局部的に大きな力が作用し損傷につながること。
・あるいは天井面の段差部や凹凸部等剛性の高い部分と低い部分の間で局所的に大きな力が加わり損傷すること

などが挙げられています。

 そして、その対策として地震時に大きく揺れやすい長い吊りボルトには振れ止めとなるブレースを設ける周囲の壁や段差等により剛性が異なる部分にクリアランスを確保するといった処置を施すとともに、吊り金具や目地材等の落下防止策を合わせて取るよう指摘しています。
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天井の耐震改修



 
 大空間天井を持つ建物の耐震改修として、国土交通省が監修する「実務者のための既存鉄骨造体育館等の耐震改修の手引きと事例」では、
■既存部位に補強等の対策を施す部分改修する方法
■天井をすべて解体、撤去する方法
■既存天井を解体し、新たに補強目標に適合した天井を設置する全面改修をする方法

の3つを基本方針として挙げています。

 どのような改修方法を選ぶかは建物の目的や機能を考慮しながら、既存天井の仕様や取り付け状況に応じて適切な判断を下す必要がありますが、まずなによりも、躯体の耐震診断と同様に現在の天井の状態を知っておくことが対策の方向性を考える上でも重要ではないでしょうか。
天井の耐震改修の考え方

天井の耐震改修の考え方


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天井と地震対策の考え方


大成建設では実験、シミュレーションを行い、天井の安全性を高める技術の開発や施工ノウハウの蓄積を進めています。

 
 ここまで地震による天井被害についての公的な指針と対策についてご紹介してきましたが、天井の破損や落下、崩落の原因についてはいまだに不明の部分が多く残されており、各種機関や専門家によって現在もそのメカニズムの究明が続けられているのが現状です。

 芸予地震等の例からもわかるように、天井被害を被る建物は大規模な空間を持つ建物によく見受けられますが、必ずしもそうした天井がすべて崩落の危険性を持つという訳でもありません。しかし、こうした大規模な天井となる建物の多くは体育館等のスポーツ施設や劇場など不特定多数の人々が利用することが多く、その点でも十分な安全性を確保することが求められます。天井部分にはスプリンクラーや照明装置、音響装置等さまざまな設備も設置されている場合もあるため、それらの対策もあわせて考慮する必要もあるでしょう。

 一方、一般的な低中層のオフィスビルなど、過去の地震においても大きな天井の被害がはあまり見られないケースでは従来の仕様や基準を満たすことで一応の安全性を確保することが可能と思われます。「危険度」という面では、天井高さも低いオフィス等の場合は、天井そのものの落下による危険よりも床に置かれた書庫や棚などの重量のある什器の移動や転倒等による危険性の方が高いとも考えられます。その他、机上のデスクトップパソコンの転倒等も含め、オフィスの場合は行っておくべきプライオリティの高い課題が他にも数多くあります。

 天井の耐震対策でも、他の地震対策と同様、建物の機能や目的に応じて総合的な判断のもと、バランスの取れた対策をとっていくことが必要であるといえるのではないでしょうか。
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