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[issued:2007.05.17]

2006年度改正:スタートした耐震改修促進計画

∼耐震化率90%に向けて出そろった都道府県の施策∼

「待ったなし」で進む行政の地震対策への取り組み。その傾向と対応について概観するとともに、何が必要か、どうすべきかについて考えていきます。

小野眞司ポートレイト大成建設(株)
LCC推進部 耐震推進室
部長(担当)
小野眞司

1. 

2006年度改正:スタートした耐震改修促進計画


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こんな方へおすすめのコンテンツです
・ 自社ビルの耐震化プロジェクトの担当者の方
・ 多数の方が利用する建物のオーナーの方
・ 旧耐震基準の建物のオーナーの方
・ 各種基幹道路、避難道路沿線の建物のオーナーの方

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促進法の改正と促進計画の策定

 耐震改修促進法(1995年12月25日施行)は現行の新耐震基準(1981年施行)以前の新耐震基準を満たさない建築物について積極的に耐震診断や改修を進めることを目的としています。同法では新耐震基準に満たない建物のうち、多数の人々が利用するものを特定建築物としており、その所有者は現行の耐震基準と同等以上の耐震性能を確保するよう耐震診断や改修に努めることが求められています(努力義務)。

 そして、より積極的な耐震改修の促進を目的に改正され、2006年1月26日より施行されています。この改正で2015年度までに耐震化率を90%とするという具体的な数値目標が設定され、特定建築物の範囲拡大や特定行政庁による指導・指示、建築基本法と連動しての命令など、その権限が明確にされています。

 また、その計画的な実現に向けて地方、国民それぞれの役割を明確に規定しており、耐震化を推進するには、それぞれの役割に応じて数値目標の実現に当たることが不可欠としています。
 これにより、地震に対する建築物の安全性を確保することは「国民の努力義務」とされ、その推進と支援のために都道府県が耐震診断・改修の具体的な目標や、地域の実情に応じた耐震改修促進計画を作成することが義務づけられています。

 これを受けて各都道府県では耐震改修促進計画の策定を進めており、2007年4月末の時点でほぼ出そろい、ホームページ上等でその内容を読むことができます。



耐震改修促進法と耐震改修促進計画


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促進計画の内容と構成についての概観

 地域によって細かな違いはあるものの計画の全体構成やそこで語られている方針については多くの共通点を見て取ることができます。それらを俯瞰し、概要をご紹介します。

詳細な被害分析に基づいた計画となっています
 各自治体では、これまでも緊急度、危険度の高い地震の想定やそれによる被害想定等がなされていましたが、公表されている促進計画ではさらにそれを進め、特定建築物の現状の耐震性などを加味したものになっています。

 耐震化率の目標もこうした「現状」をふまえた具体的なものが多く見られるだけでなく、耐震化の必要のある建物が何棟あるのかまで調べ上げるなど減災の取り組みに向けた並々ならぬ決意が表れています。



優先的に耐震化を進める建物を設定しています
 多くの自治体では2015年度までの「耐震化率90%以上」を目標としている一方で、それより低い設定を行っているもの、建物の種別ごとに目標値を立てているケースもあります。
 また、多くの計画で共通するのは、より効率よく耐震化を進め、目標を達成するために、優先的に耐震化を進めるべき建物を設定している点にあります。

 木造住宅、都心部ではマンションの耐震化を第一に挙げるとともに、オフィスビルや商業施設等をはじめとした一般の「特定建築物」については

・災害拠点や避難拠点となる建物(学校や病院等を想定)
・幼児や老人、障害者の方等災害弱者が利用する施設(幼稚園や老人保健施設、障害者施設等を想定)
・その施設を利用する多数の人が不特定の場合(大型の商業施設、オフィスビル、賃貸マンション等を想定)
・改修促進法の改正時に追加された、緊急輸送道路など指定された道路の沿道の建物

などを優先的に耐震化すべき建物としている計画が多くあります。

通行を確保すべき道路のイメージ

東京都の促進計画ではパイロットプラン的に当面上記の道路を指定してある。

 なお、緊急輸送道路については自治体が防災計画や道路計画等で指定している道路を指していますが、東京都等では総延長が膨大になるため、当面、パイロットプラン的にいくつかの道路を指定して状況を確認すること等を計画しています。
 また、防災拠点や避難場所への経路については、地震時に通行を確保すべき避難道路として、その対象となっていきます。これらの道路は、今後さらに市区町村単位でも細かく指定して行く計画とする自治体も多く、よりきめ細かな計画が策定されて行くものと思われます。


非構造部材の安全対策


 
 
トータルな地震対策の必要性が説かれています
 従来の地震対策ではもっぱら構造体そのものの耐震性について言及されてきましたが、今回の大きな特徴として非構造部材も含めたトータルな地震対策を行うよう要請されており、建築基準法に定められた定期報告によるチェック等を行うとしています。


『佐賀県耐震改修促進計画』より


指導等の実施が明確化されています
 耐震改修促進法、建築基準法による指導、指示、公表、命令の各種制度についても、その具体的な適用や手順について明確にしています。
 指導について、その実施は3月、9月の防災週間を活用すると同時に、耐震化のプライオリティの高い建物に関しては逐次パンフレット等の配布や通知を行うなどして地震対策への取り組みを促すとしています。
各種の支援措置を計画しています
 耐震診断、耐震改修の補助金についての施策は現在のところ住宅、それも戸建てが中心で、大都市を抱える地域ではマンションについても言及しています。
 しかし、計画を促進するために、一般的な建物に関しても特定建築物に関しては支援を検討するというケースも少なくはありません。その際には先ほどのプライオリティに従って実施されると予想されます。
  
 こうした計画、施策を実施するだけでなく、多くの都道府県では中間地点となる2011年に進捗状況をチェックするとしています。そのための調査や報告の要請などが適宜行われると予想されます。

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施設の耐震化と戦略的運営



耐震改修促進法に則した耐震化プロジェクトの
モデルフロー




ライフサイクルコスト
耐震改修をリニューアルや設備更新と合わせて行えば、
建物価値を総合的に高めることができます。



 耐震性は建物の資産価値基準の一つとして、その比重を高めつつあります。建築基準法の定めた基準は「安全を守る」という最低限の耐震性であり、資産価値向上のためには一歩進んで「安心」「事業継続性」まで視野に入れ、「どのような機能の確保が必要か」を判断することが求められます。そのためには施設の価値、用途や目的に合わせて総合的に判断することがポイントとなります。

 改修後も長く建物、施設を利用するのであれば、耐震診断を行うこの機会に建物の利用状況や劣化状況等についても合わせて調べることで施設価値とその運用全般全般を見直すことができます。
 また、基準法で定められている「特殊建築物」であるなら、法定の定期点検も積極的に活用し、適宜対策を取っていくことにより、LCC全体のコストダウンを図ることも可能になります。こうしたFM(ファシリティ・マネジメント)的な視点から運営を図っていくことは、施設戦略の上からも、重要性を高めていくと思われます。


 今回策定された多くの計画に記載されている支援政策、そして被害予想図やハザードマップは今後の対策資料としても非常に有益なものとなります。また、各種啓発活動や指導等も順次実施されることからも一度は目を通しておくことをお勧めします。次ページに各都道府県への詳細なリンクをご用意していますので、ぜひご活用ください。

耐震診断や助成制度の活用等、耐震改修に関するご相談はこちらからどうぞ。

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