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[issued:2007.12.25]

アリの目とトリの目、そして第3の目で取り組む事業継続

∼現場と経営を繋ぐプロの目の活用∼

取引先から等の外部要求の拡大により、ますます必要になってきた事業継続管理(BCM)。しかしその担当者には、現実に行われている「部門や事業所単位での取り組み」だけでは応えきれないのではないか?というジレンマもあるようです。

関山雄介ポートレイト大成建設(株)
FM推進部
システム計画室 課長
関山雄介

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こんな方へお勧めのコンテンツです。
・BCPの責任者として、どこからはじめればいいのかお悩みの方。
・部門BCPは策定できたがその実効性に疑問がある部門責任者の方。

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BCの取り組み状況と現実の課題

近年では取引契約の際に、BCPやそれに準ずる対策の提示を求められるケースが多くなっています


 
 事業継続の取り組みは業務中断による損失を防ぐことはもちろん、それに伴う顧客の他社への流出、市場シェアの低下、企業評価の低下などから企業を守る経営レベルの戦略的課題といえます.。最近では、取引先からの要求もきっかけの一つとなってきているようです。

 例えば、「地震等があっても3日以内に所定の量と品質のものを納品すること」等が契約条件の一つとして盛り込まれるケースが増えていると聞きます。そして、こうした契約を交わすため担当の部門や事業所単位で、BCP策定への取り組みが始まっているということです。そして、こうした部門単位で検討を始める場合は、まず、各部門の担当者が認識できる範囲のもの(例:工場の場合は主要製品を生産している機器や、オフィスの場合はパソコン等の情報機器や契約書等の重要書類)が「守るべき」対象としてあげられるでしょう。

 もちろん、最初の取り組みとしてはそれでよく、むしろ実効性を持って取り組むには実現性が高い方法といえます。しかし、事業継続への取り組みを進めていくともっと根本的な問題に行き当たることになります。大地震が発生した場合、

「原材料が入ってくるのか?」
「社員は出社できるのか?」
「そもそも製品の出荷はできるのか?」
「他工場からの応援体制は?」


など、担当者レベルでは無論のこと、事業所の長であっても対策の決済が取れない問題が数多く生じます。しかし、契約上の要件として明記されれば、それは何らかの形で実施を保証しなければなりません。
最終的には

「原材料のストックを増やすか、調達先を複数にする」
「被災地外の工場から応援を派遣してもらう」


など、企業全体の課題として取り組んでいく必要がありますが、そこまでの対応、対策になるとなかなか経営層の理解や決済を得られず苦労している場合が多いのではないでしょうか。


急速に普及するBCMへの取り組みと日本型防災の限界

特集:BCMに取り組む 第1回目は、インターリスク総研の小林誠さんに、BCMに対しする国内外の動向と国内企業の取り組みの状況、そしてこれからのBCMのあるべき姿について伺いしました。

新潟県中越地震での事業継続への影響

新潟中越地震における企業の被害状況から、事業再開に影響を与えた要因(ビジネスインパクト要因)についての分析結果です。
今後の事業継続管理(BCM)のあり方と事業継続計画(BCP)策定の方向性を探ります。


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まずはビジネスの最前線で取り組みを開始する

地震対策においてはビジネスオペレーションにかかわる個々のファシリティだけでなく、ビジネスフロー全体から耐震性を検討することが重要です。

オペーレーションとファシリティの関係
地震対策においてはビジネスオペレーションにかかわる個々のファシリティだけでなく、ビジネスフロー全体から耐震性を検討することが重要です。
個々の機器は無事でも、日常的に使用している渡り廊下が損傷すると、従業員の被災が発生し、ビジネスにも大きく影響します。
ファシリティを見るときは全体を押さえることが重要
個々の機器は無事でも、日常的に使用している渡り廊下が損傷すると、従業員の被災が発生し、ビジネスにも大きく影響します。

 
 BCの取り組みの第一歩は、リスクを明確にしていくことから始まります。ビジネスの現場では、それがオフィスであっても工場等の生産現場であっても、そこで働く人ならほぼ誰もが「これが重要なところだ」というものを取り上げることができると思います。それが止まると代替が効かず、要求された業務の遂行や製品の生産が止まってしまうものです。
 そこで働く人々はエキスパートであり、現場の状況やオペレーションを熟知しています。彼らにメンバーに入ってもらい検討やディスカッションを重ねていくことで、普段では見えないリスクを発見することができるようになります。
 これはいわばビジネスのオペレーションからのリスク洗い出しということになり、「アリの目」からの取り組みといえます。

 地震対策の上では、そのオペレーションを成立させるための設備機器やライン、あるいはデスクや書庫等の什器といったファシリティ要素を抽出して、耐震性と対比させ、検討と対策に取り組んでいくことになります。
 この場合も、個々の耐震性だけでなくビジネスの流れや全体の関係性からもリスクを把握していくことが重要になります。例を挙げると、「別棟にある事務室、会議室、更衣室から日常的に渡り廊下を使って生産現場に移動している。」という場合、その渡り廊下や通路の壁・天井、別棟の状態も問題になってきます。それらの耐震性が確保されていなければ「従業員の被災」という根本的な問題に行き当たってしまうからです(人命の確保は、BCMの基本として全ての対策に優先して行うべきことです)。これらは、事業単位や重要製品の製造ライン単位での視点では発見されにくいリスクです。

 情報化も進み、前後の工程も複雑化したネットワーク状態となっている現在のビジネスでは、建物や設備機器等のファシリティが持つ機能とビジネスオペレーションとは密接に関係しています。製造業においてはプラントや工場の機能そのものがビジネスであるといえます。
 ファシリティを検討する際にはビジネスオペレーションの視点とはまた異なった、「耐震診断」という構造的な視点はもとより、その全体を専門的に見通せる「ファシリティマネジャー」という「プロフェッショナルによる「外からの目」も必要となってきます。
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リスクの見える化


リスクの見える化の例
重要度、緊急度、回復の難易度といった指標べつに、それぞれABCのランクをつけ、その対応を含めて検討していきます



ファシリティとの対比
発見したリスクをファシリティと対比して整理すると、オペレーションとの関係や対策の容易さなどもわかりやすくなります。レイアウトの変更や書類の整理等、簡単な対策を行うだけでも効果のある対策も発見出来る様になります。


 
 リスクはそれを暴き出しただけでも役に立つと言われることがありますが、やはりそれだけでは有効な対策にはなり得ません。暴き出したリスクはリスクとして明快に、その関係者にわかる様な形にしていく必要があります。いわば「リスクの見える化」です。
 見える化には様々なアプローチがあると思いますが、ポイントは個別に認識されたリスクを「誰もがわかりやすく評価」することにあります。「ああ、これが起ると危ないな」といった「リスク認識そのものを共有」することから始めることが、その後に続く「対策の重要さ」や「プライオリティ付け」についての共通認識をはかっていくことにも繋がってきます。
 前述の様な「ビジネスとリスクに関するディスカッション」を客観的な目を持つ第三者と重ねていくことで、現場や担当者単位では見えなかったリスクも浮き彫りになり、固有リスクと思われていたものが一般化され、他の部門へ応用、展開しやすくなります。

 こうして検討を進めていくと、多くの担当者は「個別の対応は良いとしてもそもそも出勤できるのか?」等といった根本的な課題に行き当たります。また、「どこまでやればいいのか?」といったことで困惑も生じることでしょう。
 例えば「震度6強」クラスの大地震を想定した場合、通勤や帰宅に支障が生じることは想像に難くありません。東京都の場合では発生直後から被災地内では車両規制がしかれて緊急車両専用となります。こうなるといくら生産設備が完全稼働状態で維持されていても人員の確保や原材料の搬入や製品の出荷は困難になるため、実際の生産は行うことができないことになります。

シナリオの例。地震対策の場合、シミュレーションにより揺れの強さや液状化の可能性、出火可能性などを予測し、その結果をもとに「起こりうるであろう」状況のストーリーを構成します。
リスクシナリオの例
地震対策の場合、シミュレーションにより揺れの強さや液状化の可能性、出火可能性などを予測し、その結果をもとに「起こりうるであろう」状況のストーリーを構成します。


 このように、上記の「リスクの見える化」と共に重要となってくるのが「周辺で発生する状況をストーリーとしてわかりやすく提示する」リスクシナリオです。
 ビジネスの現場で発生し得るリスクを具体的に暴き出し、最も有効な対策をとっていくのが担当者の役割であるなら、全体的なシナリオの中で個別の対策のバランスをどうとるか、あるいは事業所の移転や2重化、ビジネスモデルの変更や転換といったダイナミックな施策をいつ、どこに採用するのか、事業継続における最終的なマネジメント判断は企業全体を見据えた経営者による俯瞰的な視点、つまり「トリの目」から行われるものです。

総合地震防災GISによる地震危険度評価システム

検討地域、想定地震および被害予測項目を選択するのみで、地震動強さ(最大加速度値や震度など)や液状化危険度等の地震被害予測を高精度に行い地図上に表示します。

地震リスクマネジメント

地震リスクを計算し、最も効果的な対策を経済指標の面からも評価します。
地震保険で保険料の算定基準にもなる「PML」(予想最大損害率)の算出も可能です


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身の丈から始めることの有効性

リスクマップにプロットした診断結果で、対策のプライオリティを検討します
プライオリティの検討
現状を指標に応じてリスクマップにプロットするとわかりやすく、客観的な判断もしやすくなります。指摘されたリスクはプロットされた位置や、その大きさ等からプライオリティを設定し、補強やバックアップ、あるいは補修材料の準備等の対策を考えていきます。
アリの目、トリ飲め、プロの目で取り組むことで具体的かつ実践的なBCMの構築に繋がっていきます。
3つの視点での取り組み
自社内では見えにくいリクスをプロの目を活用した「リスクシナリオ」として書き出すことで、具体的かつ戦略的なBCの構築を図っていきます。

 
 BCMは本来経営戦略としての取り組みであり、「費用対効果を求めない経営方針そのもの」であるとよくいわれます。しかし、実際には多くの場合、その重要性を認識した部門や必要に迫られた事業所単位での取り組みから始まっているというのが現状です。とりわけ我が国では地震に対するBCPの構築は緊急課題でもあります。具体的な実行力を持つ対策を早急に実施するには、こうしたビジネスの小単位からの取り組みは有効な方法と思われます。
 しかし、こうした現場から始めるボトムアップによる展開は、一回の対策で終わってしまう、あるいは対処療法的でなかなか根本的な解決先には至らず、コストのみがかかってしまうように感じてしまいがちです。なぜなら、部門の決済の範囲で行う対策には限界があること、そして有効な対策のためには他の部門との連携が必要となってくるためです。

 逆に、トップダウンから始まっている場合も、今度はその規模や範囲の大きさに押され、方針や抽象論だけで具体化に進めないというケースも少なくありません。しかし、トップダウンの場合は部門間の連携などについて話が通しやすいなど一部門だけでは解決できないものに取り組めるというメリットもあります。
  それゆえに、実効性があり、効率的に進めていくためにはトップダウンとボトムアップの両方からの取り組みが必要となります。

 まず身近なものから、人命に関わるものから積み重ねを着実に行っていくこと。リスクの見える化やリスクシナリオなどを通じて、置かれている状況を関係者の共通認識として持っていくことなどは、その後に強固なBCM文化を定着させていくための重要な基礎づくりといえるでしょう。
 そのためには、BCMの目標値であるRTO(目標回復時間)や被害想定額などの「指標」を共通言語として持つことも必要となってきます。
そして、現場単位で具体的に行う「アリの目」からの取り組みを、全体を俯瞰しダイナミックな施策を計画する「トリの目」に如何に昇華させていくのかが鍵を握っているともいえます。
 サポートするファシリティマネジャーや、リスクマネジャーなどのプロフェッショナルが持つ「外の目」を「アリの目」と「トリの目」を繋ぐものとしてうまく活用していくことが、BCM成功のポイントでは無いでしょうか。
BCP策定支援サービス

「日本版BCPガイドライン」に準拠した「事業継続計画書」を短期間に策定するための支援サービスです。

事業継続管理に織り込む施設計画

 企業にとって施設は事業を営む上でのための道具であり、スタッフやサプライチェーンの集結する場として、経営を支える需要なリソースの一つであると言えます。大成建設のBCMソリューションを提供する設計本部副本部長の町井さんに、その取り組みについてのお話を伺いました。


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