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[issued:2006.03.15]

耐震改修促進法の改正とその周辺施策

耐震改修促進法は今回の改正で何が変わったのか?

2006年1月26日より施行された改正耐震改修促進法について、建物の所有者にとってポイントとなる部分を中心に解説します。

小山実ポートレイト大成建設(株)
設計本部
プロジェクトリーダー
小山実

1. 

耐震改修促進法の改正とその周辺施策


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耐震改修促進法は、兵庫県南部地震の教訓をもとに1995年12月25日に施行され、現行の新耐震基準(1981年施行)以前の新耐震基準を満たさない建築物について積極的に耐震診断や改修を進めることを目的としています。
今回改正された耐震改修促進法(建築物の耐震改修の促進に関する法律)は、より積極的な耐震改修の促進を目的に2006年1月26日より施行され、特定建物の範囲の拡大と同時に各種支援、緩和措置を盛り込んだ内容となっています。

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耐震化を推進するため数値目標を設定


 
 近年、新潟県中越地震、福岡県西方沖地震など大規模地震が頻発しているのに加え、東海地震、東南海、南海地震、首都直下地震等の発生が切迫性を帯びており、地震防災への対策は急務となっています。

 国土交通省では改正に合わせ、10年間で住宅100万戸、学校や百貨店など特定建築物3万棟の改修・建て替えを進める数値目標を盛り込んだ基本方針をまとめています。この数値目標は改正の検討段階から提言されており、現在75%の耐震化率を2015年までに90%に引き上げるとしています。
 また、目標達成には現在より2〜3倍のペースで改修・建て替えを進める必要があるとしており、そのために今回の改正では耐震改修が義務づけられる建物の範囲を拡大し、診断や改修については自治体による指示や立入検査が可能としています。
 さらに、これに従わない場合は所有者名を公表できるようにするなど、制度の充実を図る一方で、建物所有者が耐震化を進めるための支援と緩和に関しても拡充し、行政、民間が一体となって耐震化に取り組むことを求めています。
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国、地方公共団体、国民の努力義務が明確に



改正された耐震改修法による国と地方自治体の役割と権限

 
 今回の改正では、計画的な耐震化を推進するに当たって、国が建築物の耐震診断・改修に関する目標設定や技術上の指針などを盛り込んだ基本方針を策定(国土交通省告示第百八十四号)。これをもとに、都道府県が耐震診断・改修の具体的な目標や、地域の実情に応じた耐震改修促進計画を作成することを義務としています。
 市町村には政令指定都市であっても策定義務はありませんが、都道府県の促進計画の下、それぞれの計画を立てるよう努めることとされています。

 このように、自治体、それも都道府県における「耐震診断・改修の促進のための施策」が大きく増大しており、実質的には耐震改修を促進させる主体は都道府県になったともいえます。その一方、国民に対しても地震に対する建築物の安全性を確保することを「国民の努力義務」とし、それぞれの役割に応じて数値目標の実現に当たることとしています。
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建築物への指示・指導等を強化


 耐震改修促進法では特定建築物の所有者は「当該特定物についての耐震診断」や「耐震改修を行うよう」「努めなければならない」とされており、これが「努力義務のある建物」とされています。

 「努力義務対象となっている建築物」としてはこれまで「病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、その他多数の者が利用する建物」がその対象とされていましたが、今回の改正では特定建物はおおきく3つに分けて定義されており、

1.学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、老人ホームその他多数の者が利用する建築物
とまず「老人ホーム」が追加されています。
そして
2.火薬類、石油類、その他政令で定める危険物であって政令で定める数量以上のものの貯蔵場又は処理場の用途に供する建築物
3.地震によって倒壊した場合においてその敷地に接する道路の進行を妨げ、多数の者の円滑な避難を困難とするおそれがあるものとして政令で定める建築物で、都道府県の耐震改修促進計画に記載された道路に接するもの

という2つの分類が追加されています。

 また、特定建築物のうち一定規模以上のものは、所轄行政庁が「所有者に対して必要な指示をすることができる」建物が規定されており、指示・立入検査の対象とされています。
 今回の改正では、指導・助言対象および指示・立入検査対象となる建物についても、努力義務の範囲の拡大にともない拡大されると同時に建物の規模、要件についても引き下げられており、より対象範囲の拡大がはかられています。

なお、指示対象となる特定建物については、耐震診断、耐震改修等の指示に正当な理由無く従わない場合、それが公表されることになる「公表措置」についても明文化されています。

■指示対象となる特定建築物の範囲が拡大されました
 所轄行政庁の指示対象となる建物については、従来の
 1.病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所その他多数の者が利用する建築物
に加えて新たに
 2.小学校、老人ホームその他地震の際の避難確保上特に配慮を要する建築物(法第六条)
 3.火薬類、石油類その他政令で定める危険物であって政令で定める数量以上のものの
   貯蔵場又は処理場の用途に供する建築物(法第六条・政令第三条)

が挙げられています。
また、従来、「用途にかかわらず合計階数3かつ延べ1000平米以上」と一律だった対象規模も用途によって引き下げられ、対象範囲が拡大しています。


特定建築物に該当する道路閉塞させる建物の概要


■指示に従わない建物は公表されます
 従来の耐震改修促進法においても指示対象となる特定建築部に対し、所轄行政庁は「必要な診断や改修が行われていないと認めるときは必要な指示をする」とのみ定められていましたが、今回の改正では新たに「正当な理由がなく、その指示に従わなかったときはその旨を公表することができる」という規定が盛り込まれています。(法第七条)


■道路を閉塞させる建物も指導・助言の対象となります
 地方自治体へ権限がシフトしたのと連動し、都道府県が指定した道路に接する建物で規定の高さ以上のものは、用途にかかわらず特定建築物になる可能性があり、助言・指導の対象となります。
 特定建築物となるのは「地震によって倒壊した場合においてその敷地に接する道路の通行を妨げ、多数の者の円滑な避難を困難とするおそれがあるものとして政令で定める建築物で、都道府県の耐震改修促進計画に記載された道路に接するもの」とされています。(法第六条・政令第四条)
 「政令で指定される建物」とは具体的には右図の通りですが、対象となる道路は、今後、都道府県が定める「耐震改修促進計画」において指定された道路となります。
指導/指示/命令/について

■指導・助言:出された側が尊重すべきもの
■指示:出された側が自発的に従うべきもので、指導・助言より拘束力は強い
■命令:出された側が従うべき義務を負うもので、指示よりも拘束力は強い

耐震改修の定義について

今回の改正で「耐震改修」の定義として、建築物だけでなくその敷地の整備(擁壁の設置等)も含まれることになりました。(法第2条)

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