[issued:2006.08.09]
耐震診断結果の読み方と補強目標の検討
ー耐震指標:Is値の意味と必要な耐震性能とは?ー
耐震診断結果によって得られる耐震指標Is値。
一般的には補強計画においては、この指標が0.6を上回ることが目標となりますが、それはどのような耐震性能を意味するのでしょうか?必要な耐震性能を確保するためには、どのような点に注意して計画を進めればよいのでしょうか?

大成建設(株)
設計本部
シニア・エンジニア
永井裕
こんな方にお勧めのコンテンツです。
・耐震診断や補強について検討を開始したいと思っている方
・耐震診断を行ったが、その結果について、もっとよく理解したいという方
・補強目標について、どのように考えればいいかとお悩みの方
耐震補強と制震、免震による補強の違いとは?
耐震診断の結果、補強が必要とされた場合は耐震補強計画を立てます。補強計画では建物の使い勝手や意匠的な影響などを考慮しながら、補強工法の選定や補強部材の配置を計画します。
耐震補強の目標は、一般には耐震改修促進法に基づきIs値を0.6以上となる様にします。
現在の耐震基準は、震度6強程度の大地震に対し、建物にある程度被害が生じても、建物の倒壊や崩壊を防ぎ人命に損傷を生じないことを目標としています。
前述の様にIs値が0.6以上ある建物は、現在の耐震基準で建てられた建物と同様に、
大地震時においても倒壊や崩壊には至らないというレベルでの耐震安全性があるとされています。
ここで重要なのは、
Is値0.6以上とした耐震補強は、大地震時にある程度被害が生じる可能性があることを理解しておくことでしょう。耐震補強目標の検討とは「耐震性を上げる」というよりも、
どの程度の地震に対してどこまでの被害を許容するのか?ということを検討することになります。
いわゆる耐震補強において特別に大地震時の建物被害レベルをさらに下げる必要がある場合は、予め目標とするIs値を高めておくなどの工夫を行いますが、事業継続性やPML等によって施設の資産価値等を考える場合は、制震や免震等による補強も検討の対象とする必要があります。
免震や制震を用いる耐震補強は、免震装置や制震装置により地震のエネルギーを制御し建物の揺れを抑えるということになり、建物の構造体の粘り強さや耐力によって地震に揺れに耐える様にする耐震補強とは根本的な考え方が異なってきます。
免震や制震の適用を検討する際には、
「地震応答解析」という分析により地震動に対して建物の揺れの強さや大きさをある程度正確に把握することができます。そのため、地震被害の程度が予想でき、「耐震性能の目標」が立てやすくなります。
特に免震は建物自体の揺れの強さを低減し家具の転倒などの被害を防ぐことができるため、大地震後の建物の機能維持を考えた場合、最適な補強方法といえるでしょう。
通常の耐震補強における性能
各回の耐震指標Is値についての向上を確認する
免震による補強の性能
Is値による評価ではなく、想定される地震に対して建物がどうなるかのシミュレーションによって性能を検討していく
画期的な長周期化を実現し、高い免震効果を誇るハイブリッドTASS構法。
今回はその効果を実際の地震で計測されたデータを基にご紹介します。
検討地域、想定地震および被害予測項目を選択するのみで、地震動強さ(最大加速度値や震度など)や液状化危険度等の地震被害予測を高精度に行い地図上に表示します。
本当に必要な「耐震性能」とは何か?
建物によっては「耐震性能」確保の必要性は、構造体ばかりでなく外装ヤドア、サッシ等の非構造部材や建築設備など「施設全体」を考慮する必要がある場合もあります。
また、地震で被害を受けた場合、再利用に際して「どの程度の修繕が必要なのか?」といったことやPML等を考慮した「資産価値としての耐震性」についてのご相談を多くいただいております。特に最近は 事業の継続性を考え、機能維持を前提とした耐震補強について検討したいとされるご要望が多くなっています。
耐震補強は、こうした「地震対策」全体から見ると最も基本となる対策であり、その意味でも「補強後の性能」については、ファシリティ全体にとって必要な基盤性能としてとらえていく必要があるといえます。
補強計画を進める上では、補強方法や建物の使い勝手、デザイン的な影響等に目がいきがちになってしまいます。しかし、補強投資の費用対効果をあげる上でも、診断結果を十分把握し、必要な耐震性能とカバー範囲はどこまでなのか?あるいは許容できる被害はどの程度までなのか?といった、補強の目的・目標について、今一度明確にしておくことが必要です。本来必要な耐震性能を実現するには、トータルコストを考えても「建替え」の方がメリットが大きい場合もあり得ます。
耐震補強については建物単体の問題としてだけではなく、経営課題の視点からファシリティ全体のライフサイクルの中で、中長期的な展望のもと取り組まれることが重要ではないでしょうか。
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