TOP >> Solution >> Taisei's Eye >> ヒト・建物・空間に「やさしい」耐震補強
[issued:2007.01.15]

ヒト・建物・空間に「やさしい」耐震補強

耐震改修を取り巻く環境が整備され、耐震化への取り組みが進む一方で、補強に踏み切れない建物が少なからず見受けられます。その原因と解決策を解説するとともに、ベストな耐震補強には何が必要かを考えていきます。

鈴木裕美ポートレイト大成建設(株)
設計本部
シニア・エンジニア
鈴木裕美

anchor flag

こんな方へおすすめのコンテンツです
・診断をした結果、必要な補強量が多くてお困りの方
・「建替え」か「補強も含めたリニューアルか」でご検討中の方
・ 外部補強をすると不格好になってしまうのでは? とお困りの方

anchor flag

診断・補強を取り巻く現状

耐震基準の変遷。1981年以前の設計は「旧基準」となり、耐震診断が必要。

耐震基準の変遷
1981年以前の設計は「旧基準」となり、耐震診断が必要


 建物の耐震性を確保することは地震国である日本にとって重要な課題です。
行政面からは2006年の耐震改修促進法改正による取り組みの強化や宅建法の改正によって耐震性が建物の価値評価に反映されるなど法制度の整備も進んできました。
さらに近年では「事業継続」に関する意識の高まりから、企業における地震対策も単に安全面からだけでなく、経営戦略の一つとした包括的な取り組みを検討・実施する動きが見られるようになってきています。

 このため、まずはじめに行う「耐震診断」に関するご依頼も年々増加しています。しかし実際の補強の検討の際、直面する様々な問題により、なかなか実施に踏み切れないケースも、また多くなってきている様にも見受けられます。


耐震診断や関連の法規制の詳細に関してはこちらのコンテンツもご参照ください。
耐震診断と耐震補強を考える

建物の耐震性についての解説と「耐震診断」「耐震補強」等に関する基礎知識を解説しています。

耐震改修促進法の改正とその周辺施策

耐震改修に関する規定「耐震改修促進法」の改正内容に関する解説です。


anchor flag

耐震補強の課題

内部補強

内部補強
使い勝手を考慮しないで、構造的に最も合理的な補強を考えると、建物内部に補強壁を設置する可能性が高くなる。


外部補強

外部補強
耐震壁を外部に持って行く場合、バランス等を考えることが重要。必要な耐震要素の数が増える場合があります。

(図はイメージであり、実際の補強とは異なります)


 
 耐震補強を行うにあたってはどのような課題があるのでしょうか?

これまでにいただいた多くのご相談の中から、いくつか共通の課題を探ってみたいと思います。

 耐震補強とは建物の耐力や剛性、ねばり強さを向上させて耐震性能を高めることです。
 基本的な方法としては建物にブレースや増設壁等の「耐震要素」を新たに「追加」することになります。追加する場所としては、地震によるねじれへの対策を考慮して建物全体にバランス良く、しかも必要最小量に抑えることを考えると既存の柱・梁の間にはめ込む方法が最も合理的になります。
 しかしながら、日常的に使用している建物内部へ設置する場合は、少なくとも以下の項目に着いての検討が必要となります。

1.レイアウトへの影響
追加した耐震要素により有効スペースが削減される、または動線の変更を余儀なくされるといった使い勝手への影響を考慮する必要がでてきます。
また、耐震要素として壁を追加する場合、動線だけでなく配管や空調等の設備変更も発生する可能性があります。

2.施工中の問題
工事中においても作業スペースの確保と周辺への影響(埃や水、火気、騒音)対策を十分に検討しておく必要があります。
場合によっては一時的な移転が必要になり、移転等のコストや事業への影響対策を考慮する必要もあります。

 施工中の問題はその後の使用期間に比して短期的なものではありますが、こうした課題が短・長期的な建物の運用に影響し、それにともなう生産性や収入の低下といった「経営」にとって大きなインパクトつながる恐れが大きい場合、「耐震補強を行うことは難しい」ということになります。
 これらのインパクトを避けるためには、追加する耐震要素を建物内部ではなく、影響の少ない建物の外周部に設置するという方向で考えることができます。外壁部分やさらにその外側での補強が可能ならば内部の使い勝手にはさほど大きな影響を与えることなく補強することが可能になってきます。こうした理由から、現在多くの補強計画では外壁面を外側から補強したいというご要望をいただくようになってきています。
anchor flag

「やさしい」をキーワードにプラスαの耐震補強


従来の鉄骨ブレースとも組み合わせ、デザインバリエーションを強化する大成建設の耐震補強壁
(左:クロスウォール、中:クロスウォール・メタル、右:シェイプアップX)

  補強部材を外壁面に配置する場合は、構造的なバランス等の問題からも必要最小量で済ませる内部補強に比べて、補強箇所数が増加する場合が多くなってしまいます。また、鉄骨ブレース等の追加によって外観の変化を余儀なくされるという新たな課題が発生します。

 このため、外部補強を検討する際には、少なくとも
 ・ 建物のデザイン性低下への配慮と同時に
 ・ 「採光性」、「通風性」、「開放性」といった空間環境への配慮

の両方を考慮する必要があります。

デザインと補強の融合
補強要素である「鉄骨ブレース」を外壁全体のリニューアルの中で積極的に使っている。



外装リニューアルを耐震壁で
外壁をすべて耐震壁に置き換えることで、全面的なイメージ向上も同時に実現した。


 課題である「耐震補強」「外装リニューアル」とは別の計画として考えてしまうと、その課題解決を得るのは難しくなってしまいます。しかし、耐震補強自体をリニューアルのための一つのアイテムとして「外装のリニューアルを行うのに耐震補強壁を使う」といった逆転の発想から、その解決方向が見えてくるのではないでしょうか。

 この場合、採用する耐震壁自体にデザイン性のあるものを選ぶことが必要になりますが、単体のデザイン性だけでなく「全体としてのデザイン」という視点も重要です。
 また、「既存躯体に負担をかけない」という視点も取り込み、アンカーレス工法を採用することで、同時に「使いながらの補強」という課題解決の幅を広げるとともに、「コスト低減」にも貢献することも可能になってきます。

 このように、耐震補強はそれ単体で考えるのではなく、今後の施設全体の価値向上のための一要素としてとらえていくことにより、コストメリットをはじめとした様々な相乗効果への期待もまた、産まれてくるのではないでしょうか?

 多かれ少なかれ、耐震補強は施設全体に影響する計画でもあります。その課題解決には、ヒト、建物、空間へのインパクトを如何に抑えるかが大きなポイントになります。しかし、こうした影響を逆に価値向上に向けたプラスαにつながるものとして活用するという視点も重要です。

 大成建設では「耐震補強」を「やさしい」というキーワードでとらえ、

大成建設の「やさしい耐震補強」
大成建設の「やさしい耐震補強」コンセプトマップ
大成建設の耐震補強はそれぞれの課題解決を「やさしい」というキーワードで連携させ、シナジー効果を発揮させます。

デザインへの配慮
 ・パーツとしてのデザインバリエーション
 ・補強と感じない補強
 ・外装リニューアルとしての補強
経営への配慮
 ・トータルコストでのメリット
 ・施設価値の向上
空間環境との調和
 ・採光性、通風性の確保
 ・内部設備計画の変更が少ない計画
建物に負担をかけない
 ・既存躯体への加工が少ない工法
 ・軽量の補強
利用者への配慮
 ・使いながらの施工
 ・使い勝手を変えない補強計画

といった視点から取り組んでいます。
RC造の耐震補強

耐震補強とは不足している耐震要素を補完するということ。大成建設は「やさしい」をキーコンセプトに、費用対効果の高い耐震補強をご提供します。

タフシステム(R)

あと施工アンカーをなくした、静かな耐震補強です。


クロスウォール耐震壁

デザイン性にすぐれ、建物を使いながらの耐震補強も可能にする、プレキャストコンクリートの耐震補強です。

クロスウォール・メタル

クロスウォールのデザイン性を引き継いだスリムな鉄骨ブレースの耐震補強


anchor flag

施設戦略は中長期的な視野で

補強方法の選択のポイント

補強方法の選択のポイント
■注意■
ここにあげた内容は、あくまで一般的なポイントと傾向を示したものです。実際の適用検討には、耐震診断結果に基づいた建物の性状や補強目標レベル等に着いて十分な検討を行う必要があります。


 耐震補強は「耐震性を向上させたい」という目的に対して提供する1つの手段です。耐震性能を向上させるには耐震補強以外にも制震、免震といった手段もあります。機能維持も含めた耐震性能が要求される場合は、免震が最適な解となるかもしれません。

 また、5年、10年後に建て替える予定があるのであれば、現時点で行う耐震補強は必要最低限なものにとどめておくということも考えられます。
 30年、40年とさらに長く建物を使っていくなら、補強だけではなく、建物や設備の耐久性という劣化対策や働き方の変化などによる陳腐化対策も考えておく必要があるでしょう。こうした、長期的な計画では、その後のライフサイクルコストの面からも「建て替え」という選択肢も視野に入れる必要があるかも知れません。

 特に耐久性の問題は耐震性と混同されがちですが、これは建物を構成する材料や素材の劣化、または設備機器の老朽化や配管内の汚れの蓄積等と行った経年変化による「劣化対策」という別の問題となります。躯体の劣化は耐震性能にも影響を与えますが、逆に耐震補強を行うことによって建物全体の「耐久性」が劇的に向上するという訳ではないのです。しかし、補強の際に躯体の劣化状況を把握し、その進行を止めておくなどの対策はコスト的にもメリットの高いやり方といえます。これらは、表裏一体ながらそれぞれ別の性能としてとらえ、対処して行く必要があります。


 最近では耐震診断を機に総合的建物診断を行い、今後の建物運用について検討したいというお客さまが多くなってきました。それには施設のライフサイクル(現状調査、診断、計画、施工、メンテナンス)を検討し戦略性を持って検討していくことが重要です。

大成建設の「やさしい耐震補強」は個別の技術ではなく、補強の取り組みにあたってのコンセプトです。

 大切な資産である建物を長く広い視野で捉え、その総合的な価値を向上させていくことがなによりも「やさしい」耐震補強といえるのではではないでしょうか。

こちらのコンテンツも参考にしてください

大成建設のリニューアル・コンバージョン

大成建設のリニューアルソリューションサイトです。
クリックすると別ウィンドウで事例ページが開きます。

免震レトロフィット(免震補強)

今ある建物を使いながら免震建物に!
免震レトロフィットは、建物を使いながら基礎部分や中間階の柱等に新しく免震装置を組み込むことによって、既存の建物を免震建物に生まれ変わらせる「免震補強工法」です。


制震レトロフィット(制震補強)

地震エネルギーを吸収する制震装置を使った耐震補強は、建物の変形をおさえ、耐震性能を高めます。

耐震補強のROI(費用対効果)

地震対策にかかる費用とその効果とは何か?
地震対策の基本ともいえる耐震補強。その費用対効果(ROI)の検証を評価手法と参考データにより行います。


お問い合わせ

印刷